手持ちの資料から文章を抜粋してPowerPointに貼り付ければ、それらしいスライドができた気がする。でもちょっと待ってほしい。そのスライドで本当に聞き手を納得させることができるのか。プレゼンテーションの達人、戸田覚氏は詳細な説明文はスライドから排除すべきだと説明する。その理由は。

聞き手にスライドを読ませるのではなく、あたかも紙芝居のように、語りに耳を傾けてもらうことが重要だ (C)Shutterstock
聞き手にスライドを読ませるのではなく、あたかも紙芝居のように、語りに耳を傾けてもらうことが重要だ (C)Shutterstock
今回のポイント
1.細かい説明文はスライドに書かない
2.スライドと企画書では役割が異なる
3.細かい説明のメモは別欄に控えておく

 プレゼンが苦手だという方には、いくつかのパターンがある。「スライド作成は自信があるが、発表がいまいちうまくいかない」という方のプレゼンを見せていただくと、実はスライドがきちんとできていないケースがとても多い。

 とにかくスライドに文字を書きすぎているために、発表にも失敗しているのだ。特にIT系企業や技術に強い方によく見られるパターンだ。

 ITや技術系の業種では、説明が難しい製品やサービスが多いのは理解できる。だからといって、説明すべき内容をすべて書くのは大きな間違いだ。

 子供の頃に見た紙芝居を思い出してみてほしい。もし紙芝居が文字ばかりで絵がなかったら、見ている子供は興ざめ。演者の語りなどを聞かずに、どこかに行ってしまうだろう。

読むのではなく自分の言葉で語る

 スライドは紙芝居のように聞き手の興味を引き出し、注目させる役割があるが、最も大切なのは演者の言葉に耳を傾けてもらうこと。それなのに、スライドに文字を多く書いてしまったら、言葉を聞く集中力は格段に下がる。読めば分かる文書を画面に映しているのだから、当然だ。

 プレゼン慣れしてない人が緊張してたどたどしく説明しているとしよう。その内容といえば、スライドに書いてある文面を読んでいるだけだった――これは最悪だ。聞き手は飽き飽きして、とっとと自分で読んでしまう。説明などこれっぽっちも聞かないだろう。自分の言葉で熱意を伝えて説得するというプレゼンの目的も果たせない。これがスライドに説明を書いてはいけない最大の理由なのだ。

スライドと企画書は全く違う

 スライドには、細かな説明を一切書かないと割り切ってほしい。まずは、自分がこれまでに作ったスライドを見直してみよう。「説明は書かない」という意識を持っていないと、下のようなスライドになる。

 繰り返すが、スライドは紙芝居だ。だから口頭で説明するのであって、聞き手に読ませるのではない。そう考えると、下のように説明をほとんど書いたスライドは失格そのものなのだ。

読んで理解できるのはスライドではない。ここまで書き込むと企画書に近くなる
読んで理解できるのはスライドではない。ここまで書き込むと企画書に近くなる

 上司から「スライドを見せてみろ」と言われて提出し、「これでは何を言いたいのか分からない」とダメ出しを受けたら、実はそれでいい。そもそもスライドを見せろという上司が間違っている。チェックをしたいなら、プレゼンそのものを見るべきなのだ。

 説明を書き込んだスライドを渡せば、上司は分かりやすいと言うかもしれないが、それは企画書として合格だったと捉えるべきだ。すべてが書いてあって読むことを前提とした文書が企画書、口頭の説明を受けて初めて理解できるのがプレゼンのスライドだ。PowerPointで企画書を作ってもかまわないのだが、ツールは同じでも、目指すゴールは全く違う。両者を混同している人が多すぎるのだ。

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