仕事の最終目的は、プレゼンテーションのスライド作りではなく、あくまで商談や会議で対面する人々を説得すること。働き方改革が進む昨今、スライド作りに過度な時間をかけることは望ましくない。プレゼンの達人、戸田覚氏はスライド1枚の作成時間は約10分と指摘する。その理由は何か。
2.1枚のスライドを作る時間は10分に
3.まず7枚のスライドで概要をまとめる
これまでの2回は、主にプレゼンで成功するための概念を紹介してきた。基本的な概念については、まだお伝えしきれていない部分もあり、今後も折に触れて説明していくつもりだが、そろそろ実践で使えるノウハウを紹介していこう。
プレゼンのコンサルティングをしながら最も痛感しているのは、多くの人が「背伸びをしすぎている」ということだ。この春、ヒット商品のプレゼンを集めた本を出版する。今回も多くの成功事例を取材した。そこでも再認識したのだが、爆発的にヒットした商品のスライドでさえ、はっきりいって結構シンプルな作りのものが多い。
つまり、趣向を凝らした見栄えのいいスライドを作ろうと時間をかけすぎるのは、ナンセンスでしかないということだ。プレゼンの書籍やセミナーでは、美しいスライドを見かけるかもしれない。それはあくまでも見栄えのよいサンプルだ。無理に近づけようとしても、時間がかかるばかりだ。
第1回でも触れたが、仮に1時間の商談を2件行い、それぞれスライド作りに3時間をかけるとそれだけで合計8時間。これで毎日が終わってしまう。効率を考えると1時間の商談に使うスライドなら2時間以内で作りたいところだ。
スライド1枚は3分で説明する
もう一歩踏み込んで、スライド1枚を作るのにかけられる時間は何分かを考えてみよう。そのために1時間の商談に必要なスライドの枚数から逆算していく。まず、1時間の中で、挨拶や相手の質問などの時間を20分としよう。そう考えると、正味のプレゼン時間は40分程度になる。
これまで数え切れないほどのプレゼンを取材してきた経験からすると、おおむね平均的な説明時間は1スライドにつき3分だ。つまり40分の説明なら、13~14枚のスライドが必要となる。その13~14枚を約2時間で作るのだから、1枚のスライドを作る時間は約10分という計算になる。まずはこの「1枚10分」を目安にしていこう。
「10分は短いな」と感じるかもしれないが、スライド作りに慣れてくれば可能だ。表紙などは時間がかからないし、製品の写真なども貼り付けるだけで終わるだろう。逆に、数値しかない表をグラフ化するのに時間がかかることもある。すべてのスライドを平均してこの程度ということだ。
商談を5件するなら、最初の1つは長い時間をかけてスライドを作り、後はアレンジすることで時短できるケースもある。ただし、一切カスタマイズせずに通用するほど話は甘くない。前回紹介したように、相手が聞きたいことや知りたいことを入れ込まなければ関心を持って聞いてはもらえない。提示する商品やサービスは同じだとしても、相手に合わせてカスタマイズするべきなのだ。
いずれにせよ、限られた時間でスライドを作る癖を付けていかないといけない。毎回数日間かけて素晴らしいスライドを作り、その結果1本の商談が決まったとしても、ノルマの達成は難しいのだ。場合にもよるが、スライドの出来としてはホドホドであったとしても、商談の件数を多くこなすことで、結果として売り上げにつながってくることは多いはずだ。
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