何を伝えるか明確になっているか?

 プレゼンの本に必ず書いているのが、「キラーインフォメーション」というキーワードだ。これは僕が作った造語だが、簡単に言ってしまうと相手に刺さる情報ということだ。

 「今回のプレゼンで最も重要な内容はなんでしょう?」

 プレゼンのコンサルタントをさせていただく機会も多い。そのときには、最初に必ずこんな質問をする。すると、ほとんどの方が、商品やサービスの特性を答える。「旧モデルより優れた点です」「他社にはない機能です」といった具合だ。だがこれは、「自分や自社が言いたいこと」でしかない。

 確かにビジネス上で、製品やサービスの差異化は重要なことだ。しかし、あなたが伝えたいことが、相手が聞きたいこととマッチしているとは限らない。プレゼンの最初の目的は関心を持って聞いてもらうことであり、伝わらなければどれだけ時間をかけても全く無意味なのだ。

 伝えるという意味で最も重要なのは「あなたが言いたいこと」ではなく、「相手が聞きたいこと」なのだ。これをキラーインフォメーションと呼ぶ。

 いくら機能や性能を伝えたところで、相手が知りたいのが価格だったなら、キラーインフォメーションは価格であり、最も重要な内容なのだ。そのうえで、全体の構成を考えていく必要がある。価格を最初に言うか、最後に言うべきか……といったことを考える。さらに、価格に絡めて自分が言いたいことを伝えれば、相手の記憶に残してもらえる。

 例えば、スライド冒頭のタイトルを作る際、以下の2つではどちらの内容を聞きたくなるだろうか?

新製品の特長を伝えるために、機能を強く打ち出したタイトルの例
新製品の特長を伝えるために、機能を強く打ち出したタイトルの例
キラーインフォメーションを「価格」と想定したタイトルの例。価格に興味がある聞き手であれば、一体いくらなのか早く知りたくなるだろう
キラーインフォメーションを「価格」と想定したタイトルの例。価格に興味がある聞き手であれば、一体いくらなのか早く知りたくなるだろう

 機能や性能より、価格を知りたいという聞き手であれば、刺さるのは下のタイトルだろう。少なくとも「で、いくらなの?」と関心を持って聞いてもらえるはずだ。つまり、相手が聞きたいことをキラーインフォメーションにし、そこに自分が伝えたいことを絡めていくわけだ。この手法は今後、さらに詳しく解説していく予定だ。

「取りあえずテンプレ」は卒業しよう

 スライドを作る際に、取りあえず社内で過去に作ったファイルを探している方は、そろそろそんなやり方を卒業すべきだ。過去のスライドがどんなコンセプトで作成され、何がキラーインフォメーションだったのかも分からずに流用し、何となくお茶を濁したものを作ったところで、成果はたかが知れている。デザインを流用するのは構わない。だが、話し手である自分の強みや、聞き手のことを考慮せず、構成や内容まで流用していては、ちゃんと伝わらないのだ。

 先ほどのチェックシートの中で「文章が上手に書ける」をチェックした人は、気を付けたいことがある。成功できないプレゼンで、特に目立つのが、やたらに内容を書き込んでいるスライドだ。プレゼンは紙芝居だ。説明は口頭でするものであって、読ませるのではない。文字で読ませるなら話す必要はなく、それはプレゼンではなく企画書になってしまう。

 コミュニケーション力に自信がない人ほど、話すべきことを書こうとする。心配で書きたいなら、PowerPointのノートエリアに書いておき、それを読むだけでも全然違う。あなたが話す内容を書きすぎてしまうと、聞き手は先に読んでしまい、勝手にその内容を判断してもう関心を持たなくなる。

 会社で広く使われているテンプレが文字ばかりなので、多くの社員がそれに倣い、社を挙げてダメスライドを作りまくっている。そんな失敗例もよく見かける。「うまい」と言われるプレゼンのスライドの多くは、話を聞くまでは、その内容が見えてこないものだ。これは故スティーブ・ジョブズ氏を含め、レベルの高いプレゼンをすることで定評がある米アップルなどの例を見ていてもよく分かる。そうした企業のスライドは、キーワードしか書いていないのだ。

 この連載では、シナリオの立て方から資料の作り方、実際の相手を前にした話し方まで、プレゼンのノウハウを全網羅して解説していく。次回から、より具体的にさまざまなプレゼンのノウハウを紹介していく。皆さんのスキルアップにつながれば幸いだ。

(次回テーマは「構成の練り方」。2月20日の掲載予定です)