今回はウエアラブルソリューションで注目されるミツフジの後編。当初は抗菌靴下を作ろうか、廃業して就職するか、などと追い込まれた三寺歩社長。ならば思い切って自社で開発したらどうかと開き直った。そこから反撃が始まった。

G20大阪サミットの「Japan Innovation Lounge」に展示したミツフジのウエアラブルソリューション「hamon」。導電性の繊維「AGposs(エージーポス)」を使用した下着で着用者の生体情報を取得し、ストレスなどを可視化できるようにした。下着に装着した小型発信機で生体情報を送信する
G20大阪サミットの「Japan Innovation Lounge」に展示したミツフジのウエアラブルソリューション「hamon」。導電性の繊維「AGposs(エージーポス)」を使用した下着で着用者の生体情報を取得し、ストレスなどを可視化できるようにした。下着に装着した小型発信機で生体情報を送信する

 2019年6月28日と29日に大阪国際見本市会場で開催された20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)。各国のプレスが集まる国際メディアセンター内に日本政府による展示会「Japan Innovation Lounge」があった。日本の先端技術などを海外にアピールするためのイベントで、ロボットや医療関連など多くの企業が出展するなか、会場の一画で出展されたのが、ミツフジ(京都府精華町)が開発したウエアラブルソリューション「hamon」だ。

 これは独自開発による導電性の繊維「AGposs(エージーポス)」を使用した下着により、着用者の生体情報を取得して心拍やストレスなどを可視化するシステム。企業が導入すれば従業員の健康管理につながり、いわゆる「健康経営」の実現に近づくとして期待されている。

 16年にhamonを発表して以来、ミツフジは建設会社など約40社に提供しており、約5000人が活用しているという。大手IT企業の日本IBMもミツフジと提携しているほど、健康経営をテーマにしたウエアラブル市場の成長が見込まれている。今回、ミツフジがJapan Innovation Loungeで出展できたのは、hamonの技術力が評価されたからだろう。

G20大阪サミットのJapan Innovation Loungeでは、日本の先端技術などを海外にアピール。ロボットや医療関連など多くの企業が出展した
G20大阪サミットのJapan Innovation Loungeでは、日本の先端技術などを海外にアピール。ロボットや医療関連など多くの企業が出展した

売り上げを得るために抗菌靴下を作ろうと思ったことも

 ミツフジはもともと、西陣織の製造を手掛けていた企業。三寺歩社長は、ミツフジの前身である三ツ冨士繊維工業の先代社長の長男で三代目。2001年からパナソニックやシスコシステムズ、SAPジャパンなどの企業でソリューション営業に従事し、12年にミツフジに入社。14年に社長に就任した。そうした経験をhamonの開発に生かしている。

 だがミツフジに入社した当時は、売り上げも少なく廃業寸前だった。数人しか社員がいないミツフジをどうやって維持すべきか。最初は抗菌性という特徴を生かしてAGpossを繊維業界に販売。一時は売り上げが立ったこともあった。だが抗菌性をうたう薬剤の登場に伴い、次第に業績は悪化していく。仕方なく、自分たちで抗菌性の靴下を作って売ろう、と考えていたこともあった。

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