メモ用紙を1枚ずつめくると、3次元(3D)の精巧な清水寺本堂などが現れる。そんなメモパッド「OMOSHIROI BLOCK」が1万円と高額ながら大人気。開発したのは文具メーカーではなく、トータルデザイン会社のトライアード(大阪市)だ。

トライアードのメモパッド「OMOSHIROI BLOCK」。1枚のメモ用紙の大きさが85×82ミリメートルで、標準小売価格は1万円(税別)。人気は清水寺本堂が出てくる「Kyoto」シリーズだ(写真/丸毛 透)
トライアードのメモパッド「OMOSHIROI BLOCK」。1枚のメモ用紙の大きさが85×82ミリメートルで、標準小売価格は1万円(税別)。人気は清水寺本堂が出てくる「Kyoto」シリーズだ(写真/丸毛 透)

 ユニークな発想とちょっとした工夫で新商品やサービスを開発し、成功している中堅中小のイノベーター企業を追う本連載。今回はトライアードの前編。建築模型やディスプレイの製作などを担当する同社が開発した高級なメモパッド「OMOSHIROI BLOCK」が注目されている。

 2017年12月に大阪市の東急ハンズ梅田店で発売するとSNSですぐ話題になり、トライアードのホームページにアクセスが殺到。一時はサーバーがダウンするほどだったという。その後、トライアードのECサイトの他、東急ハンズの梅田店や新宿店、銀座三越、ロフトなどの一部店舗でも取り扱われるようになったが、入荷するといずれも即完売するほど大ヒット。国内だけでなく、台湾や香港の誠品書店でも販売される人気の商品となった。

 OMOSHIROI BLOCKは、70~150枚のメモ用紙で構成。それぞれのメモ用紙は、京都の清水寺本堂や東京・浅草寺の風雷神門といった構造物を、いわば輪切りにしたもので、それらを積み重ねることで立体を表現する。構造物の平面図に合わせてメモ用紙を1枚ずつレーザー加工でカットしており、書き込める範囲は1枚ごとに異なる。最後までめくっていくと、残ったメモ用紙が清水寺本堂などになる。標準小売価格で1万円(税別)と高額だが、メモパッドとして使える他に使い切った後は精巧な模型として飾れる点も、ユーザーから評価されているようだ。

 いくつかの種類を販売しているが、人気の製品は清水寺本堂が浮かび上がる「Kyoto」シリーズ。ピンクの「華-HANA-」、緑の「凛-RIN-」、茶の「壌-TSUCHI-」、紫の「雅-MIYABI-」といったバリエーションがあり、季節感をイメージした色合いにしている。めくったメモ用紙にも遊び心があり、Kyotoシリーズの場合は「着物姿の女性」などのシルエットに切り取られる細工が、一部に入っている。この他、グランドピアノの模型が現れる「Piano」は、内部構造までも精密に再現。小さい鍵盤に触れると「本当に音が鳴りそう」と感じさせてくれる一品だ。

 風景などをデザインした数千円台の製品もあるが、「売れ筋は1万円のもの」と商品企画に携わった企画営業部の妹尾恵理子マネジャーは話す。出荷数量は明らかにしないが、全製品で毎月1000個以上を売り上げるという。

使用する前のKyotoシリーズは、一見すると普通のメモパッドだ(写真/丸毛 透)
使用する前のKyotoシリーズは、一見すると普通のメモパッドだ(写真/丸毛 透)
めくっていくとメモ用紙の切れ目に応じて清水寺本堂が少しずつ出てくる(写真/丸毛 透)
めくっていくとメモ用紙の切れ目に応じて清水寺本堂が少しずつ出てくる(写真/丸毛 透)
Kyotoシリーズの場合、めくったメモ用紙の何枚かに「着物姿の女性」のシルエットが出てくるなど、遊び心も持たせた(写真/丸毛 透)
Kyotoシリーズの場合、めくったメモ用紙の何枚かに「着物姿の女性」のシルエットが出てくるなど、遊び心も持たせた(写真/丸毛 透)

建築模型の技術力を一般の人に伝えたい

 トライアードの創業は1999年。建築模型の製作、建築設計の他、トータルデザイン会社としてディスプレイやプロダクト、グラフィック、ウェブなどのデザインを手掛ける。海外へのインターンシップや留学を支援する事業もある。17年より新たな事業として立ち上げたのがOMOSHIROI BLOCKだった。

 なぜデザイン会社がオリジナルプロダクトを作ることにしたのか。これまで制作してきた建築模型やディスプレイなどは企業が相手で、一般の人に触れることはなかったからだという。「創業以来、建築模型の製作で培ってきた当社の技術を、老若男女問わず一般の人にも知ってもらいたい、その技術を楽しんでもらいたいと思った」と妹尾氏は明かす。

 開発がスタートした当時は、企画部として堀口英人社長や妹尾氏、模型製作の技術者など4人がトライアードのスローガン「OMOSHIROIをかたちに」を、何とか具現化しようと知恵を絞っていた。「展示会への出展やデザインコンテストへの応募など、一般の人たちが見て楽しんでもらえる“OMOSHIROI”ことを展開してきた」と妹尾氏は言う。

 そんななか、トライアードが培ってきた模型制作の技術を生かし、1枚ずつ紙を切り取ることで何らかの構造物が現れるようにすると一般の人にインパクトを与えるのではないか、といった意見が出た。模型を製作してきたトライアードには、平面図を3D化する立体造形の技術があったからだ。さらにオフィスで使う最も身近な商品としてメモパッドがあり、これらからOMOSHIROI BLOCKを思いついたという。

 現れる構造物については、トライアードのデザイナーが「日本の建築構造美を表現できるモノ」として選んだ。最初の製品が清水寺本堂だった。観光地として人気の京都で、清水寺本堂は特に有名だからだ。開発チームは清水寺本堂の柱の数も数えて平面図を作り、3Dとして忠実に再現するようにした。メモ用紙の素材にもこだわり、色や柄のついた特殊紙の中で、日本らしい色合いと1枚ずつめくるときの心地良さで選んだ。

 17年11月にOMOSHIROI BLOCKとしてピンクの清水寺本堂が完成した。しかし企業向けのビジネスしか展開してこなかったトライアードにとって、OMOSHIROI BLOCKは初めての消費者向けの商品。販売チャネルは全くのゼロだった。そこから新たな挑戦が始まったのである。

グランドピアノが現れる「Piano」。内部も精巧に作っており、実際に弾けそうなイメージがする
グランドピアノが現れる「Piano」。内部も精巧に作っており、実際に弾けそうなイメージがする
東京・浅草寺の風雷神門が出てくる「Asakusa」。インバウンド向けのお土産にもなりそうだ
東京・浅草寺の風雷神門が出てくる「Asakusa」。インバウンド向けのお土産にもなりそうだ

(写真提供/トライアード)