下請け専業から離れ、独自ブランド「センベイブラザーズ」を立ち上げた笠原製菓。4代目の笠原健徳社長はさまざまなアイデアで商品をアピール。「店の前を通り過ぎる3秒間で、どうしたらお客に振り返ってもらえるかに知恵を絞った」と言う。

笠原製菓は生産コストを抑えるために、新商品の開発にも知恵を絞った。そこで割れせんべいを生かした商品のアイデアも考えた(写真/名児耶 洋)
笠原製菓は生産コストを抑えるために、新商品の開発にも知恵を絞った。そこで割れせんべいを生かした商品のアイデアも考えた(写真/名児耶 洋)

 今回は、せんべいの「SENBEI BROTHERS(センベイブラザーズ)」ブランドを立ち上げた東京・江戸川区船堀の笠原製菓の後編。笠原兄弟の兄・健徳氏が4代目社長を継いで1カ月後の2014年10月、「センベイブラザーズ」ブランド初の小売りを、東京・江戸川区船堀にある自社工場で開始した。10月末には近隣の公共施設の広場で開催された催事に出店。11月には最寄りの地下鉄都営新宿線の船堀駅構内での路上販売も始めた。その後も1年にわたって週末に工場で直売したり駅で路上販売したりした他、月に1回程度は地元の催事にも出店する“草の根”販売を続けた。地元での知名度は次第に上がり、出店のたびに買いに来る常連客も増えていった。

 だが週末の工場直売や路上販売と、月に1度程度の催事出店だけで、負債を抱え廃業の危機に瀕(ひん)した笠原製菓の業績は好転しない。本質的な課題を解決しなければ先行きはおぼつかない。兄は、さまざまなコストの削減に取り組んだ。「赤字なのに請け負っている下請けの仕事があった。これをまず断った。仕入れる原料の量に比べて1回の製造ロットが小さく、原料が劣化して捨てざるを得なくなってしまう仕事も断るなど、下請けの受注を取捨選択した」(笠原社長)。その結果、現在は下請けとして仕事をしている取引先は数社に絞られた。

 さらにパートの採用をフレキシブルにした。リースで借りていた機器類は安いレンタルサービスにしたり、印刷も安価なネット印刷に切り替えたりするなど、徹底的にコストを見直した。わずか1年での黒字化達成は、これらのコスト削減策も大きく寄与した。

 コスト削減のアイデアは、センベイブラザーズの商品でも発揮された。センベイブラザーズのせんべいは、1つのパッケージに割れたせんべいがおよそ10%入っている。製造ロスを減らし、無駄なコストを排除するためだ。せんべいは製造途中でどうしても割れるものが出てくる。割れたせんべいは、割れていないせんべいと味に違いはないが、廃棄ロスはコストに跳ね返る。

 そこで透明の樹脂ボトルに、白煎り胡麻(ごま)、黒胡椒(こしょう)、甘辛七味、ザラメの4種類の割れせんべいだけを入れた「センベイカーニバル」を開発。大口径のボトルを使用することで、おしゃれなアイテムとした。また、黒胡椒とザラメの2種類の割れせんべいを入れた「センベイカクテル」も作った。

工場で直販していたときの写真。連日、多くのお客が列をつくって買い求めた
工場で直販していたときの写真。連日、多くのお客が列をつくって買い求めた
船堀駅前で販売していたときの写真。お客から直接意見を聞きながら商品開発に生かした
船堀駅前で販売していたときの写真。お客から直接意見を聞きながら商品開発に生かした

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