「おもろい蛇口を作る」として話題の水栓金具メーカー、カクダイ。新製品の成果は意外なところにあった。社員の士気が上がり、社員の家族も水栓金具に関心を持ち始めた。そこからもアイデアが広がるなど、「お笑い」が好循環につながった。
ユニークな発想とちょっとした工夫で新商品やサービスを開発し、成功している中堅中小のイノベーター企業を追う本連載。今回は大阪市で「おもろい蛇口を作っているメーカー」として話題を集める水栓金具メーカー、カクダイの後編。Da Reyaシリーズの企画・開発に取り組み始めたのは2011年で、発売の開始は12年から。すると社外の評判が良くなった他、社内にも好影響を与えた。
初期の製品は多田修三副社長のアイデアを基にしたものが多かったものの、「もう私のネタが尽きた」ことから、社員から広くアイデアを募る形に移行した。採用されると、副社長から賞金も出るようにした。すると社員たちは熱心に考えるようになった。単に賞金目当てで動くわけではない。「業務改善とか生産性向上とか、経営上の課題を解決しようとコンサルティングの先生に見てもらって、『こうすればいいですよ』とアドバイスをもらって指示しても、実際に現場の人間はなかなか動かない。しかし、Da Reyaシリーズのように自分のアイデアを実現する機会があれば、喜んでいろんなことを考え、課題を解決しようと積極的に取り組むようになった」と多田副社長は言う。「要は、みんな作りたくてしょうがないんですよ」(多田副社長)。
「このご時世だから、経営者としては残業を減らすように力を入れているのに、この仕事に関しては『残業代はいらないからやらせてくれ』という社員も多い。そういうわけにもいかんから困ったもの」と多田副社長は苦笑する。社員のモチベーションを向上させる効果は相当なものだ。
社員同士の他、社員と家族の間にも「何かおもろい蛇口のアイデアはないか」という会話が生まれるようになった。それまで水栓金具に興味がなかった社員の家族や子供も、飲食店などで水栓金具を見ると「これ、お父ちゃんの会社のやろか」と仕事に対して理解をしてもらえるようになった。
Da Reyaシリーズからは、次々とユニークな製品が登場している。例えば「魔法の水」は、昔懐かしいアルマイトのやかんの形をした水栓。やかんを傾けることで水が出る。19年開催の「ラグビーワールドカップ2019」を記念し、救護用のやかんをイメージしたという。蛇口を膨らませた製品は、「誰や! メタボにしたん?」というネーミングが強い印象を与える。「手裏剣蛇口」は手裏剣がそのまま蛇口になっており、どこから水が出るか分からない。忍者をイメージさせる製品のため、外国人観光客をターゲットにした店に好評だという。
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