ヨーロッパ製品との違いをいかに出すか

 カクダイがDa Reyaシリーズの企画・開発に取り組み始めたのは2011年だった。「水道水栓の市場は、国内では大手2社が圧倒的な強みを持ち、世界的にはドイツをはじめとするヨーロッパのメーカーが主導権を握っている。当社のような中小企業は、どうしても大手の後追いやヨーロッパの模倣になりがちだったけれども、それではいつまでたっても評価も尊敬もされない。思い切って冒険してみようと考えた」と多田修三副社長は言う。そこで、大阪の企業らしくお笑いの要素を蛇口に取り入れたのだ。

 「多くの社員は、営業とか開発とかそれぞれ自分のポジションだけにとらわれて発想したり行動したりする面がある。立場の違う社員が集まり、1つの共通する目標達成のために力を合わせる場を作れば、コミュニケーションが活発になり、社内を活性化できるのではないか」。そう考えた多田副社長はプロジェクトチームを作り、「お笑い」をテーマに多田副社長がいくつかのアイデアを出して形にするという課題を出した。

 Da Reyaシリーズはどれも水しか出ない水栓だが、市場は水と湯を混ぜて出す混合水栓が主流。水しか出ない水栓は、誰も新規投資しない終わった市場とされているという。「だから少々何をやっても怒られることはないだろう」(多田副社長)というもくろみもあった。全製品に占めるDa Reyaシリーズの割合は少ないが、だからこそ好きなように実験できる。

 「実際発売してみると、『ふざけている』といったお叱りはほとんどなく、応援の声しかない」と多田副社長。しかもネットで度々話題に上り、知名度やイメージもアップした。「SNSでフォロワーが多い人など、影響力のある人が話題にすると、一気にアクセス数が増える。年に1回ぐらいの頻度で、サーバーがダウンするほどの爆発的なアクセスが来ることがある」(多田副社長)。

 製品化に当たっても、「ああしたらどうや」「こうしたらどうや」といったアイデアが活発に出て議論が盛り上がる。設計・製造段階では、従来にない形のものばかり。しかも形が優先のため、実際に作るのは非常に難しいものが少なくない。それでも技術者は喜んで課題に取り組んだため、結果的に技術力が高まったという。

 例えば、カクダイが開発した一般用のシングルレバー混合栓には、Da Reyaシリーズで培った技術がフィードバックされているという。「『びよ~ん』のように細長く、しかも水を通せる中空構造を継ぎ目なく一体で作るのは非常に難しかった。その技術を生かし、背が高く継ぎ目のない製品を作ることができた」(多田副社長)。Da Reyaシリーズによってカクダイは、さまざまな製品を発想していくことになる。

無機質なイメージ空間に合う「なっとらん!」(1万8000円)。ボルトとナットを組み合わせたイメージの蛇口である
無機質なイメージ空間に合う「なっとらん!」(1万8000円)。ボルトとナットを組み合わせたイメージの蛇口である
一般的な蛇口のシングルレバー混合栓(6万3000円)には、Da Reyaシリーズ「びよ~ん」で培った技術がフィードバックされている。細長くて水を通せる中空構造を継ぎ目なく一体で作るのは難しいからだ
一般的な蛇口のシングルレバー混合栓(6万3000円)には、Da Reyaシリーズ「びよ~ん」で培った技術がフィードバックされている。細長くて水を通せる中空構造を継ぎ目なく一体で作るのは難しいからだ

(写真提供/カクダイ)