オアシスライフスタイルグループ(東京・港)が傘下の水道工事会社の作業着を刷新。スーツのようなデザインにしたところ評判が広まり、2017年12月にアパレル会社を立ち上げ、18年3月から外販した。その結果、年間で1億円を売り上げた。

2019年2月から期間限定で「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が伊勢丹 浦和店や仙台三越などで販売されるまでになった
2019年2月から期間限定で「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が伊勢丹 浦和店や仙台三越などで販売されるまでになった

 ユニークな発想とちょっとした工夫で新商品やサービスを開発し、成功している中堅中小のイノベーター企業を追う本連載。今回は、家庭用の水道工事なども手掛けるオアシスライフスタイルグループの前編。まるでスーツのように見える作業着を開発し、注目を集めている企業だ。

 一般的な作業着といえば、ペン差しやポケットなどの機能性を兼ね備えた、ブルゾンやつなぎなどが多い。「身を守る」「動きやすい」「洗いやすい」など、さまざまなメリットがある一方で「地味」「汚い」「格好悪い」といったマイナスのイメージを抱く人もいるだろう。

 そんな作業着のイメージを変えるのが、「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」だ。スーツの持つフォーマル感をデザインとして打ち出した他、作業着としてのストレッチ性や毎日のように洗っても使用できるなど、防水や速乾、はっ水といった機能も備えた。作業に必要な工具などを収納するためのポケットも多い。

 17年12月にはワークウェアスーツの販売を中心としたアパレル会社のオアシススタイルウェアを立ち上げ、18年3月からECサイトなどで外販に乗り出した結果、4月には単月売上目標の5倍を達成。年間で1億円を売り上げた。19年2月から期間限定で伊勢丹 浦和店や仙台三越などでも販売。法人向けのユニフォームビジネスも展開している。

 オアシスライフスタイルグループの母体は水道工事会社のオアシスソリューションで、06年に東京・豊島で創業。その後は水道工事以外にも手を広げ、13年には台湾のタピオカミルクティーの発祥の店といわれる「春水堂」を日本国内に展開してカフェ事業にも進出した。現在はオアシスライフスタイルグループとして、オアシスソリューションやオアシススタイルウェアなど4つの子会社を持つ。オアシスライフスタイルグループの17年2月期の売上高は23億9000万円だ。

「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」にはネイビーとブラックがある。19年4月初旬より新色のダークネイビーとチャコールグレーも展開する。写真左は「テーラードジャケット」(裏地あり)で価格は1万8000円(税別)。別売りのパンツと組み合わせることが可能で、シャツもある。写真右は女性向けの「テーラードジャケット」で価格は2万1000円(税別)で、別売りのパンツもある。生地はポリエステル系
「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」にはネイビーとブラックがある。19年4月初旬より新色のダークネイビーとチャコールグレーも展開する。写真左は「テーラードジャケット」(裏地あり)で価格は1万8000円(税別)。別売りのパンツと組み合わせることが可能で、シャツもある。写真右は女性向けの「テーラードジャケット」で価格は2万1000円(税別)で、別売りのパンツもある。生地はポリエステル系
スーツとしてのデザイン性と作業着としての機能性を両立させた(オアシススタイルウェアの資料より)
スーツとしてのデザイン性と作業着としての機能性を両立させた(オアシススタイルウェアの資料より)
ワークウェアスーツを着た従業員の作業風景。ブルゾンとは異なり、スマートな印象だ
ワークウェアスーツを着た従業員の作業風景。ブルゾンとは異なり、スマートな印象だ

目指したのは、そのままデートに行ける、お洒落な作業着

 なぜ、アパレル事業に乗り出したのか。当初は、事業化する考えはなかったという。ワークウェアスーツは、オアシスソリューションの創立10周年のプロジェクトで誕生したものだったからだ。同プロジェクトで企業のイメージアップにつながる施策を検討した結果、「ユニフォームの変更」がテーマに挙がった。地味なイメージがあるためか、水道工事の事業で新入社員の獲得に苦戦していたからだ。

 「イメージを変えるには、どうするべきか考えた。若手社員に聞き取り調査を行ったところ、ユニフォームに引け目を感じていることが分かった」(オアシススタイルウェアの中村有沙社長)。

 当時のユニフォームは、ブルゾンにカーゴパンツという一般的な作業着スタイル。機能的で手入れしやすい。だが、従業員は自宅から工事現場に作業着のまま直行する場合があるため「通勤時に恥ずかしい」という声があった。さらに「作業着のままでは工事現場近くの飲食店に入りにくい」「仕事が終わっても、作業着のまま飲みに行くのはいや」という従業員もいた。作業着のネガティブなイメージをどう覆すかが課題だった。

 ユニフォーム変更のプロジェクトがスタートしたのは15年末。中心メンバーは当時のオアシスソリューション社長の関谷有三氏(現オアシスライフスタイルグループ社長)など社内のメンバー5人。業務の合間に定期的に集まりながら、ミーティングを重ねた。新しいユニフォームを作るに当たり、重視したことは3つ。「水道工事業のイメージを変える、お洒落なユニフォーム」「従来の作業着以上の機能性を兼ね備えたユニフォーム」「女性から見て、清潔感がある印象のユニフォーム」だった。

 水道工事では顧客の家に上がってメンテナンス作業をする。このとき家庭を預かる女性が立ち会う場合がほとんどのため、女性から受けが良く、清潔感がある服装が好ましい。そんな作業着なら、仕事終わりにそのまま飲みに行ったり、デートに行ったりすることもできるはず。こう考えて、新しいユニフォームのコンセプトを「デートに行ける作業着」に決めた。

 次に考えたのが「デートで着る服はどんな服だろう」ということだった。つなぎやハーフパンツなど、カジュアルなデザインの服でデートに行けるだろうか。議論が煮詰まり、なかなか決まらなかった。作業着でありながらデートに行ける服とは何か。プロジェクト開始から約半年後、「思い切ってスーツにしたらどうか」というアイデアが中村氏から出た。

 「仕事終わりにデートをしている男性を観察していると、スーツを着たりジャケットを羽織ったりしていることが多い。これだと思った」(中村氏)。スーツなら居酒屋はもちろん、レストランやホテルにも気兼ねなく入れそうだ。若者や女性受けも良い。早速、試作品の製作に取りかかった。

ワークウェアスーツの開発風景。男性向けの作業着にも女性の目線を取り入れている
ワークウェアスーツの開発風景。男性向けの作業着にも女性の目線を取り入れている
製造は外部の工場に委託している。当初は製品指示書の書き方も分からなかったという
製造は外部の工場に委託している。当初は製品指示書の書き方も分からなかったという

ユニフォームが変わったことで、従業員の意識も変化

 実際の製造は外部の工場に委託した。「スーツ」の他に機能性に対する注文も伝えた。「会社のイメージアップ」という目的があったため、コストは考えなかったという。

 時間がかかったのは、ユニフォームに使用する生地の選定だった。水道工事のとき、従業員は大量に汗をかくため、ユニフォームを毎日洗う必要があった。そのため、丈夫で動きやすいことの他、乾きやすく、ノンアイロンで使用できる素材であることが前提だった。そこでスポーツウエアの素材を中心に、100種類以上の生地見本を取り寄せた。

 出来上がった試作品は、開発チームのメンバーである従業員が実際に着用。現場で使用した。すると「生地がゴワゴワしている」「手を上げるとつっぱってしまう」「ポケットの向きを変えたい」などの意見が出た。それらを改善に生かし、試作を3~4回繰り返した。

 試行錯誤を繰り返し、17年秋にワークウェアスーツの第1弾が完成。すぐ社内に導入したものの、当初は反対の声も多かったという。「これまでの作業着に慣れているので、スーツのような作業着を着るのが恥ずかしいという意見があった。しかし顧客や家族、友人などからのポジティブな反応を見るうちに、抵抗感も薄れたようだ」(中村氏)。

 ワークウェアスーツを導入したことで最も変化したのは、従業員の髪型だった。以前は、「どうせ作業着だから多少ボサボサでも構わない」「寝ぐせがあっても、帽子をかぶれば分からない」などと言っていたような従業員も、スーツに合うようなきれいな髪型で会社に来るようになったという。

 そんなとき、スーツのように見える作業着を着ているオアシスソリューションの従業員の姿を、取引先の企業が注目した。そこから本格的なアパレル事業へと展開することになる。

ワークウェアスーツのイメージ画像。写真はビジネスパーソンをターゲットにした新ライン「YZO」を着用したところ。18年11月に販売した。もはや作業着のイメージはない
ワークウェアスーツのイメージ画像。写真はビジネスパーソンをターゲットにした新ライン「YZO」を着用したところ。18年11月に販売した。もはや作業着のイメージはない

(写真提供/オアシスソリューション)