産業分野の電源装置メーカーであるベルニクス(さいたま市南区)が、2019年4月からテーブルウエアの分野に進出するとして注目されている。得意の電源技術を生かし、ワイヤレス給電で保温・加熱できる家庭用のマグカップや卓上照明を開発した。
ユニークな発想とちょっとした工夫で新商品やサービスを開発し、成功している中堅中小のイノベーター企業を追う本連載。今回は1978年に創業したベルニクスの事例を前編として採り上げる。ベルニクスは社員数が100人ほどの、産業機器向け電源メーカーだ。発電所や航空機から通信機器、医療機器まで、さまざまな産業分野の設備や機器に組み込まれる電源装置を開発・製造・販売している。
そんなBtoB企業が長年にわたって培ってきた電源向けの技術を生かし、2019年4月からBtoC市場に進出する。発売するのは武骨な電源のイメージとはかけ離れた、食卓に並べて使うテーブルウエアの分野。商品名は「POWER SPOT(パワースポット)」だ。開発の支援やデザインを手掛けたのはデザイン経営の実践で知られるMTDO(エムテド)の田子學デザイナーである。パワースポットの販売目標は3年後の22年3月までに25億円。現状の売上高が20億円前後のベルニクスにとって挑戦的な試みといえる。
パワースポットは、保温・加熱機能を備えたマグカップ「MUG」や日本酒向けの「CHOKO」の他、小型の卓上照明「LUX」がある。これらを円形の送電モジュール「HOME」の上に置くだけで電気が供給される。使われているのはワイヤレス給電と呼ぶ非接触の給電技術で、コードを接続する必要がない。
ワイヤレス給電の国際標準規格には「Qi(チー)」があり、さまざまな電子機器で利用されているが、現在の規格では最大15W。一方、パワースポットは産業機器のノウハウを生かし、最大50Wの充電が可能。そのため今までの電子機器とは異なる新しい使い方が広がるという。電気自動車の電源としては対応できないが、家庭向けに市場を定め、まずはマグカップや卓上照明として投入していく。
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