今回は1回目で取り上げた光浦醸造工業の後半。150年以上前から味噌やしょうゆなどを作ってきたが、2003年ごろからBtoC向けの商品を次々と開発し、デザインも光浦健太郎社長自ら手掛けるようになった。そんな中、全国の工芸品・雑貨などを扱う中川政七商店から電話がかかってきた。

光浦社長は、新商品のパッケージデザインを自ら手掛けている。左から「ひよこ豆とごまのドレッシング」、白だし「まほうだし」、めんつゆ「まほうつゆ」、「光うらの麦みそ」、「瀬戸内芳麦みそ」、「ひよこ豆みそ」、「精進肉みそ」「LEMON SALT 熟成塩レモン」。18年に「まほうつゆ」と「まほうだし」のパッケージを、ガラス製の瓶からペットボトルに変更した。発送コストを抑えるためだったという
光浦社長は、新商品のパッケージデザインを自ら手掛けている。左から「ひよこ豆とごまのドレッシング」、白だし「まほうだし」、めんつゆ「まほうつゆ」、「光うらの麦みそ」、「瀬戸内芳麦みそ」、「ひよこ豆みそ」、「精進肉みそ」「LEMON SALT 熟成塩レモン」。18年に「まほうつゆ」と「まほうだし」のパッケージを、ガラス製の瓶からペットボトルに変更した。発送コストを抑えるためだったという

 ユニークな発想とちょっとした工夫で新商品やサービスを開発し、成功している中堅中小のイノベーター企業を追う本連載。今回は光浦醸造工業(以下、光浦醸造)の後半。

 光浦社長がBtoC向けにビジネスを始めようと思ったのは01年頃。当時は、業務用の味噌としょうゆのみを取り扱い、1社ごとの取引の割合が約10%という状況だったからだ。「1社でも契約を打ち切られたら、売り上げも10%減り、経営が厳しくなることは明らかだった。BtoCの商売も検討すべきだと考えた」と光浦社長。

 まず、取りかかったことは、業務用商品のサイズダウンだった。当初、パッケージデザインは外注するつもりだったが、連載1回目で説明した通り、思い通りのデザインがあがってこなかったため、自ら手掛けた。ただ、デザインについては素人だったため、IllustratorやPhotoshopなどソフトの使い方を独学で習得。デザイン作業は、仕事が終わった後、寝る間も惜しんで取り組んだ。

 販路の開拓も、手探りだった。当時、光浦醸造では、個人向けの商売の経験がなく、もちろん販路もなかった。まずは、地元の「道の駅」で販売し、03年には自社のホームページとオンラインショップを立ち上げた。だが、1日のアクセス数が5件といった日も珍しくなかった。まったく売れない日が続いたという。

 売り上げを伸ばすための目玉となる商品が必要だと考えて開発したのが、乾燥レモン付き紅茶「フロートレモンティー」シリーズだった。もちろんパッケージは、光浦社長が手掛けている。10年に食品・飲料専門の展示会「フーデックス・ジャパン」に初出展。翌年からは食品専門商社の日本珈琲貿易を通じて、スーパーマーケットの「北野エース」に卸すようになった。

素人の垢ぬけないデザインが安心感を生んだ

 ブレークのきっかけは、全国の工芸品・雑貨などを扱う中川政七商店との取引だ。中川政七商店のバイヤーから、フロートレモンティーシリーズについて依頼があり、13年から同店で販売を開始した。すると1週間後には全国のショップから「新規で取引したい」という連絡が次々と入ってきた。その多くは、中川政七商店のような雑貨や洋服などを取り扱うライフスタイルショップだった。その後、新商品を中川政七商店で新商品を販売すると、同様の現象が何度も起きたという。

 ヒットの要因は、商品自体の魅力にあることは間違いない。その後押しとなったのは、スタイリッシュすぎない等身大のデザインだ。プロのデザイナーが見たら、味噌や調味料などのパッケージデザインとの統一感がなく、垢抜けていないと感じる部分もあるだろう。しかし、紅茶にレモンを浮かべたときのかわいらしさをそのまま表現したような優しい雰囲気のパッケージデザインは、国産の素材をつかっている商品の安心感ともリンクする。ライフスタイルショップの店頭に並べても違和感がない。「デザインを自ら手掛け、商品開発の一部だと実感した。商品に込めた思いをダイレクトに表現できると自負している」(光浦社長)。

 フロートレモンティーシリーズの人気に伴い、光浦醸造の知名度が高まった。今では自社や外部のECサイトによる味噌や調味料の販路が広がっている。食材宅配サービスの「Oisix」には、光浦醸造のコーナーがあるほど。セブン-イレブンの宅配サービス「セブンミール」や、レシピサイトのクックパッドが運営するマルシェアプリ「Komerco -コメルコ」でも商品を販売している。

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