米アップル日本法人を経て2014年からテスラジャパンの社長を務めた樺山資正氏。米国西海岸に渡り、AI(人工知能)スタートアップ、アップリフトラボ(Uplift Labs)を17年に立ち上げた。ゴルフや野球などの動作をスマホで手軽に分析する技術で、プロからアマチュアまでコーチングの常識を変えようとしている。

米アップリフトラボの「Uplift Capture」の画面。スポーツ選手の動きを分析し、パフォーマンスの向上やケガの防止に活用する
米アップリフトラボの「Uplift Capture」の画面。スポーツ選手の動きを分析し、パフォーマンスの向上やケガの防止に活用する

 2台のiPhoneを三脚で立てて動画を撮影するだけ。かつては研究所でセンサーを取り付けてモーションキャプチャーをしていたような高い精度の3Dデータが取れる。米アップリフトラボ(以下、アップリフト)の「Uplift Capture」は、スポーツ選手やコーチが骨格の動きを分析し、パフォーマンスの向上やケガの防止に活用するためのサービスだ。

 映像関連の企業を米ゴープロに売却した技術者や、米カーネギーメロン大学のAI科学者と共に2017年、アップリフトを創業した。当初は、モバイルカメラGoProを使ったAI分析のサービスを開発した。一部のスポーツ施設などで採用が進んだが、20年3月の新型コロナウイルス感染症拡大で「スポーツ業界全体がシャットダウンし、施設の利用もできないし、個人レッスンのトレーニングもできないという状況が続いた」とCEO(最高経営責任者)の樺山氏は振り返る。

異なる角度から2台のiPhoneで撮影し、スポーツ選手の動きを捉える
異なる角度から2台のiPhoneで撮影し、スポーツ選手の動きを捉える

 ロックダウンが続く中、非接触の時代に対応できるサービスに向けた改良に踏み切った。撮影に使う機器をGoProからiPhoneへと切り替えたのだ。GoProの場合、内蔵するSDカードを外し、パソコンに動画データを取り込み、アップロードするという手間が必要となる。iPhoneであれば、専用のアプリを入れておけば、撮影後に簡単に動画をアップロードし、スムーズにリアルタイム分析ができる。コーチが遠隔地にいても、手軽に指導を受けられるので、パンデミックへの対策がしやすくなる。画面の大きなiPadを使うこともできる。

 異なる2つの角度から撮影した映像をAIが分析し、関節の位置を推定し、正確なトラッキングをする。腕や肩や腰の動きをグラフで表示できるほか、美術のデッサンに使う人形のような3Dのスケルトンモデルを生成し、客観的な視点で動作を見つめ直すこともできる。

米アップリフトラボCEO(最高経営責任者)の樺山資正氏
米アップリフトラボCEOの樺山資正氏

 多数のカメラを使って同様の分析ができる競合サービスもあるが「シンプル、使い勝手がよく、精度も高いという3拍子がそろうものは他にない」(樺山氏)。3Dの骨格がどう動いているかを分析するプラットフォームとして、米国内で強力な特許を取得できたことも強みという。日本や欧州でも特許を申請している。

米国のゴルフレッスン大手が採用

 iPhoneで撮影するUplift Captureを提供開始したことで、同サービスを採用する企業やスポーツチームが広がりつつある。21年7月には、ゴルフ専門サイトのゴルフダイジェスト・オンライン傘下の米ゴルフテックが、アップリフトの技術をサービスの中で採用した。同社は230スタジオ以上を展開する米国トップクラスのゴルフレッスンチェーン。

 10年以上にわたり利用者の体に複数のセンサーを取り付けて分析するシステムを利用してきたが、Uplift Captureの技術を取り込むことで、センサーの取り付けが不要となる。感染症対策がしやすくなることが採用の決め手になった。ゴルファーのスイングを分析し、プロが腕や肩あるいは足腰の使い方をアドバイスする。既に米国200カ所で導入し、日本、シンガポール、香港でも全店舗で導入済みになっている。

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