米アマゾン・ドット・コムは米国時間2022年8月5日、ロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」の米アイロボットを買収すると発表した。アマゾンは音声AI(人工知能)「Alexa(アレクサ)」を中心に、家庭内の状況を把握しつつ、生活の利便性を高める環境構築を目指す。センサーで宅内を検知できるルンバはその構想を実現する鍵となる。

米アマゾン・ドット・コムはロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」の米アイロボットを買収すると発表した。写真は22年7月のAlexa開発者イベント「Alexa Live」より
米アマゾン・ドット・コムはロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」の米アイロボットを買収すると発表した。写真は22年7月のAlexa開発者イベント「Alexa Live」より

 アマゾンはアイロボット全株取得を目指す。負債を含めた買収総額は約17億ドル(1ドル134円換算で約2300億円)の見通し。同時に発表したアイロボットの22年4~6月期の決算によると、売上高は2.6億ドルで前年同期比30%減だった。需要が予想より下回ったことで、営業損失は6400万ドルと3四半期連続の赤字となり、構造改革が求められていた。

 アイロボットは2002年にルンバを発売し、世界で4000万台超を出荷してきた。EC大手のアマゾンが、なぜロボット掃除機のアイロボットを買収するのか。その背景には、音声AIのAlexaを核として展開を目指す「アンビエント(周辺環境の)コンピューティング」と呼ぶ生活空間の情報化構想がある。

音声AIを中心に家庭内のさまざまな機器をつなぐ「アンビエント(周辺環境の)コンピューティング」を目指している
音声AIを中心に家庭内のさまざまな機器をつなぐ「アンビエント(周辺環境の)コンピューティング」を目指している

 アマゾンは継続してハードウエア事業に取り組んで来た。07年には電子ペーパーを使った電子書籍端末の「Kindle(キンドル)」、11年にはタブレットの「Kindle Fire(キンドルファイア)」、14年にはテレビに接続する「Fire TV Stick(ファイアTVスティック)」を投入した。表示が目に優しい、あるいは画面が大きいという特徴を持ち、スマートフォンとは異なる利用シーンでデジタルコンテンツを快適に表示できるようにした。アマゾンはこれら機器を安価に販売し、電子書籍や映像などアマゾンのコンテンツ配信サービスの利用につなげてきた。

音声で掃除の時間や場所も指定

 スマホに変わる新しい操作の手段として14年に投入したのが、音声AIのAlexaを搭載したスマートスピーカー「Echo(エコー)」だった。これはアマゾンの音楽配信サービスやオーディオブックの再生など、音にまつわるコンテンツを利用するだけでなく、家電を声で操作する機能を持つ。照明、エアコン、コーヒーメーカーといった家電と無線LANなどでつながり、各種の操作ができる。

 スマホの画面でも同様の操作はできるが、スマホを置いた場所へ取りに行き、指紋やパスコード入力でユーザー認証し、タッチ操作でアプリを開くといったひと手間が必要になる。音声という本来の人間のコミュニケーション手段に近い形で、スムーズにネット上の情報やコンテンツ、さらには家中の機器に快適にアクセスできるという利用環境が、アマゾンが目指すアンビエントコンピューティングとなる。

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