世界中からスタートアップが集結し、技術やマーケティングの新トレンドに触れることができるイベント「COLLISION 2022」が2022年6月20~23日にカナダのトロントで開催された。カナダ出身の人気インフルエンサーによる動画配信のコツやネット広告など、マーケ関連の講演から概要を紹介しよう。

カナダのトロントで開催となったテクノロジー系イベント「COLLISION 2022」
カナダのトロントで開催されたテクノロジー系イベント「COLLISION 2022」
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 COLLISIONは、2015年から始まったテクノロジー系イベント。会場内には大小さまざまなステージが設けられ、IT関連を中心とするキーパーソンが講演し、多数のスタートアップがピッチ(短いプレゼンテーション)を繰り広げる。起業家たちが製品やサービスを説明する小さなブースが大量に並んでいるのも特徴で、名刺を集めたり、名札のQRコードを読み取ったりして人脈を広げる。

 20年と21年はオンライン開催となったものの、22年はカナダのトロントでリアル開催となった。参加者は約3万5000人、1500社超のスタートアップが集まったという。大きなステージでも講演は20分程度と短いが、多彩なスピーカーが次々と登場する。ここでは数ある講演の中から、マーケティングに関係するトピックをいくつか紹介する。

製品主体からデータ重視のアプローチに

 家電や美容・健康機器メーカーであるオランダのフィリップスは20年に同社では初めてとなるCMO(最高マーケティング責任者)を迎えた。米IBMでマーケティング担当副社長などの経歴を持つロレイン・バーバーミラー氏である。新型コロナウイルス感染症拡大の中で就任したバーバーミラー氏は、世界100カ国以上に渡るグローバルな規模で「仕事のやり方全体を再設計し、顧客や消費者とどのように関わっていくかを再考した」。

 具体的には製品主導のアプローチから、データに基づくマーケティング手法へと全面的に切り替えた。AI(人工知能)や機械学習のデータ分析で、行動や意図に関するインサイトを導き出し、行動を予測することができるように、すべてのエンゲージメント(顧客とのつながり)を構築したという。

オランダのフィリップスCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)のロレイン・バーバーミラー氏(右)
オランダのフィリップスCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)のロレイン・バーバーミラー氏(右)
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 例えば、妊娠中の母親には「Pregnancy+(プレグナンシープラス)」というアプリを提供し、利用者の体で何が起こっているのか、どのような変化が予想されるのかという全行程をサポートする。赤ちゃんが生まれた後は「Baby+(ベイビープラス)」という別のアプリで、さらなるつながりを構築する。「消費者や患者のヘルス・ジャーニー全体を通じて、消費者や患者と一緒にいたいと考えている」(バーバーミラー氏)

 同社では「コンシューマー360」と呼ぶデータベースを構築した。脱クッキーの動きが広がる中で重要となるファースト・パーティー・データを活用し、タッチポイントを可視化。どのチャネルが消費者にとって最適な体験をもたらすかを分析している。B2B(企業向け)や医師などのプロ向けには「カスタマー360」という仕組みをつくり、AIや機械学習で顧客の全体像をつかみ、行動を予測している。

 同社は約130年の歴史を持つ。今後も「DNAやブランドとしての生い立ちに基づき、グローバルレベルで一貫した顧客体験や消費者体験を提供する」とバーバーミラー氏は話した。

20歳でフォロワー数は2500万人

 TikTokを中心に活躍するカナダ在住のインフルエンサー、ジョシュ・リチャーズ氏は配信者の立場から、視聴者を引き付けるためのノウハウを披露した。現在は20歳で、TikTokでは2500万人以上のフォロワーを抱えている。起業家という側面も持っていて、Z世代向け映像コンテンツ会社のCEO(最高経営責任者)を務めている。高校一年生から動画の投稿を始めたというリチャーズ氏は、「今ビデオを投稿すれば、明日までに100万もの“いいね”が獲得できる。高級なカメラがなくてもいい。子供でも新しい道を切り開くことができる」と魅力を語る。

TikTokで活躍するカナダの人気インフルエンサー、ジョシュ・リチャーズ氏(左)
TikTokで活躍するカナダの人気インフルエンサー、ジョシュ・リチャーズ氏(左)
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 TikTokなどの動画サービス上でインフルエンサーと連係し、製品やサービスをプロモーションしようという企業も増えている。

 同氏が企業と連係をする場合は、既に日常的にその商品を使っている場合を優先するという。「使っている商品やブランドであれば、自分のファンに話をするときに、単なる広告塔ではなく、正直に真実を伝えられる」(リチャーズ氏)。本音で伝えることができれば、それが視聴者にも伝わり、次の動画へと切り替えられてしまう可能性が減る。少なくとも、企業は価値観を共有できるインフルエンサーを探すことが大切だとアドバイスする。

 Z世代はどんな動画コンテンツを求めているのか。リチャーズ氏は3つのポイントを挙げた。1つは「共感できるもの」。近寄りがたいセレブというイメージではなく、身近なスポーツを実演する、ちょっとしたユーモアを交えた内容にするなど、視聴者と身近な存在であることを示す演出が必要となる。2つ目は、動画クリエーター(インフルエンサー)の「カリスマ性」。親近感を持てる存在でありつつも、ビジュアル面のインパクトや、巧みな話術など視聴者を引き付ける力は欠かせない。

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