米国ではメールマーケティングの海外カンファレンス「Eメールイノベーションサミット」が毎年開催されている。2021年6月に開催された今回は「アクセシビリティー」や「インクルーシブ」の話題が目立ち、「メールのユニバーサルデザイン」がトレンドとなっている。
欧米で研究盛んなメールマーケ
近年、電子メールをビジネスコミュニケーションへのチャネルとして活用することへの重要性が見直され始めている。コロナ禍では対面でのマーケティング施策が難しい。1to1コミュニケーションに近い状態を実現するメールは、見込み顧客との関係深化の文脈で貴重なチャネルと言える。マーケティングオートメーション(MA)ツールの隆盛や、サード・パーティー・クッキー排除に伴いファースト・パーティー・データを持つことの重要性が高まっていることも、メールに注目が集まっている背景として挙げられる。
こうした理由により、欧米ではメールマーケティングを重視する。当然、研究も盛んだ。2020年に初めてメールマーケティングの海外カンファレンス「Eメールイノベーションサミット」を聴講した筆者は、日本との差に驚いた。日本では細かいテクニックが知識として紹介されることが多い。
同カンファレンスでは、受信ボックスに届きやすくする方法や、コンバージョンにつながるメール構造といったテクニックもシェアされた。しかし、それと同じくらい、企業としてあるべき「スタンス」を紹介する場面も多い。「ヒューマンタッチな(人間味のある)メールを送ろう」「倫理観を大切にしよう」。これらはそのごく一例である。開封率をはじめとする数字のみを追いかけがちな日本とは対照的である。
欧米のメールマーケティングに影響を受けた筆者は、2年続けてカンファレンスを聴講した。どんなカンファレンスでもそうだが、続けて参加することでトレンドや本質を正しく理解できる。21年のトレンドは冒頭でも述べた「メールのユニバーサルデザイン」である。基調講演に相当するキーノートで触れられたほか、個別セッションでもテーマとなっていた。
パンデミックでメール戦略を見直し
キーノートスピーカーは、米オラクルマーケティングコンサルティングのリサーチ部門トップ、チャド・ホワイト氏が務めた。ホワイト氏は18年にメールマーケティング界のソートリーダー(特定の分野の権威)として選出されている。3版まで出版されている著書『Email Marketing Rules』は、メールマーケティングの基礎を丁寧に解説したもので、広く読まれている。筆者も同書を熟読し、メールマーケティングへの理解を深めた。
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