米西海岸を中心に31店舗を展開する老舗の大型家電量販店「Fry’s Electronics」が2021年2月24日、全店舗を閉鎖し、事業を停止すると発表した。ネットの米アマゾン・ドット・コムと、リアル店舗の総合スーパーの米ウォルマートなどのはざまで競争力を失い取引先が離反。新型コロナウイルスの感染拡大がとどめを刺した格好だ。
Fry’s Electronicsのサイトではネット販売もしていたが21年2月24日、即座に1枚のページに切り替えられた。顧客や取引先、それぞれがアクセスするためのメールアドレスが掲げられている。情報が掲載され同日に全店舗での事業をシャットダウンした。
Fry’sの店舗の特徴は1000坪以上の広大な面積を誇る販売フロアである。シリコンバレーでは創業時から電子部品を販売し、ガレージ起業の技術者を支えて来た。その経緯からパソコンやその関連製品が充実している。巨大な店舗の会員制量販店コストコホールセールと同規模とイメージすると分かりやすいだろう。以下のFry’sが撤退したスペースの写真は、店舗全体の4~5分の1が写っている。
店によって西部開拓時代やエジプトのピラミッドなど独自のイメージで内装を統一しているのもFry’sの特徴だ。カフェテリアのような飲食コーナーがある店舗もある。ショッピングセンターと同規模の店舗と駐車場を運営しており、高コストなのは一目瞭然だ。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が重なって来店客が減り、Webサイトの集客力もないため、乗り切れなくなった。
一方、ウォルマートや大手家電量販店のベストバイなどは顧客が商品を駐車場で受け取れるカーブサイドピックアップに即座に対応し、堅調な売り上げを維持してきた。ベストバイはFry’sほど大きな店舗を保有せず、高速道路沿いの目立つ場所に立地している。サプライチェーンの高度化にも投資を続けている。20年10月に終わった四半期の決算はオンライン販売が前年比174%増となり、全体の売上高も同23%増と堅調だ。米メディアによるとベストバイは21年2月、全従業員の約20分の1に当たる5000人のフルタイムを、2000人のパートタイムに置き換えた。消費構造の変化に先手を打っているのだ。
各所に欠品の目立つ商品棚
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー