米アマゾン・ドット・コムは2021年2月2日、ジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)がエグゼクティブチェア(執行会長)となり、クラウドサービスの米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のCEOであるアンディ・ジャシー氏が昇格すると発表した。21年の第3四半期に交代するという。

米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO。2019年9月、米シアトルで開催したハードウエア発表会(撮影/シリコンバレー支局)
米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスCEO。2019年9月、米シアトルで開催したハードウエア発表会(撮影/シリコンバレー支局)
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 「驚くべき発明は数年後には、その新しいものが当たり前になっている。人々はあくびをし、それは発明家への最大のほめ言葉だ。業績を見るときは発明の長期的な累積の結果を見ている。今、アマゾンは今までになく独創的であり、移行に最適な時期だと考えた」

 アマゾンのベゾスCEOは2020年1月~12月期の通期決算とともに交代を発表し、声明を出した。実際の経営の移行は21年7~9月に実施し、ベゾス氏は業務の執行権も持つ会長職であるエグゼクティブチェアとなる。

シアトルに目を付けた先見性

 アマゾンは1994年に「カダブラ」という社名で設立された。ベゾス氏は米ニューヨークのヘッジファンドの副社長を務めていたが、インターネットに可能性を感じ、元妻のマッケンジー・ベゾス氏(現在はマッケンジー・スコット氏)と、自動車を運転して西海岸の米ワシントン州シアトルを目指した。その後、現在の社名に変更し、97年に米ナスダック市場に上場した。

 なぜニューヨークでなくシアトルか。そこには大手小売りのコストコ・ホールセールが本社を構えるように新世代の流通業に好立地だったのだ。大きな港があり、米ボーイングの本拠があり空運も発達している。そして、eコマースなどインターネットにチャンスを見いだしていたベゾス氏にとって、米マイクロソフトのお膝元でもあり、優秀なエンジニアを多く雇用できるのも魅力に映っただろう。

コストだったITで利益の大半を稼ぐ

米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のアンディ・ジャシーCEO。19年6月、米ワシントンDCでのAWSイベント(撮影/シリコンバレー支局)
米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のアンディ・ジャシーCEO。19年6月、米ワシントンDCでのAWSイベント(撮影/シリコンバレー支局)
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 CEOに就任予定のジャシー氏は97年にアマゾンに入社した。eコマースの事業でシステム投資が重くなっていたところに目を付けて、クラウドサービスを外販のビジネスにすると提案。2006年にAWSのサービスが始まった。ジャシー氏が03年に事業案をベゾス氏に提案した際、ものの30分で認められたという逸話もある。今やクラウドサービスは19年に全体の利益の約8割、20年も6割以上を稼ぐまでになった。コストでしかなかったITを金の卵に転換したのだ。

 ベゾスCEOは声明の中で「発明があってこそのアマゾンだ。我々はクレージーなことを一緒にやり、それを日常のものとしてきた。カスタマーレビュー、1クリック、パーソナライズされたレコメンド、プライムの超高速な配送、(レジなしで会計できる)ジャストウォークアウトのショッピング、クライメート・プレッジ(気候変動対策に関する誓約)、キンドル、Alexa、マーケットプレイス、インフラとなったクラウドコンピューティングなどを開拓してきた」と振り返った。

 米政府は20年中ごろから、テクノロジー大手に対する監視を強め、米グーグルや米フェイスブックが提訴されるなどしている。ベゾス氏の会長就任はこうした外的要因への対処に力を振り向ける狙いもあるとみられる。医療ヘルスケア、金融など、これまで以上のロビー活動が必要な新事業も多くある。