米フェイスブックは、仮想空間に没入するVR(Virtual Reality)とともに、現実空間に仮想の物体や情報を重ねて表示し、現実を拡張するAR(Augmented Reality)に注力している。とりわけ重要なのは、キラーアプリの確立だ。いまだ理想には遠いが、5つの壁を打ち破る研究開発にまい進する。
2020年9月に開催したオンラインイベントで、米フェイスブックはイタリアの大手眼鏡メーカーLuxottica(ルックスオティカ)との提携を発表した。同社の著名ブランド「Ray-Ban(レイバン)」のARグラスを21年に製品化すると宣言し、話題をさらった。フェイスブックが、日常的に利用する一般消費者用途でARを普及させたい意図を明確にした格好だ。「コミュニケーション」やEC(電子商取引)、地図などが鍵を握るとみて、力を注いでいる。
ARに関しては、AR用ヘッドマウントディスプレー(HMD)と業務用ソフトウエアなどが製造現場や作業現場といったBtoB用途で既に採用されている。だが一般消費者用途、すなわちBtoC用途では一部のスマホ向けアプリやゲームでの利用にとどまる。「ARグラス」と呼ばれる小型・軽量のHMDを日常で身に着ける理想の未来は、まだ見えない。
ARを一般消費者市場に広く浸透させるために、フェイスブックは5つの壁を乗り越える研究開発や企業買収などにまい進している。(1)キラーアプリの確立と(2)眼鏡並みに小型・軽量のARグラス、(3)周囲の環境を3次元(3D)データとして記録した3Dマップ、(4)プライバシー保護、そして(5)ARグラスとやりとりするユーザーインターフェース(UI)技術――である。
とりわけ重要なキラーアプリの確立については、BtoB用途では比較的簡単だ。業務や作業に必要な情報をARグラスに表示させると、両手が空くので作業効率の向上につながる。
つまり、情報の提示そのものがキラーアプリとなる。一方、難しいのがBtoC用途である。日常生活でニュースや天気、気温といった情報を提示するだけでは、とても役立ちそうにない。市場規模は、BtoCが圧倒的に大きいだろう。フェイスブックは今、BtoCのキラーアプリ開拓に血眼になっている。
スマホ用ARでは、既にキラーアプリを見いだした。同社傘下の「Instagram(インスタグラム)」で利用できるARフィルター機能である。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー