米アップルは2020年10月13日(現地時間)、スマートフォンの新機種「iPhone 12」の4モデルを発表した。次世代通信の5Gに対応し、カメラ機能を高性能化するなど、予想通りの新機能を投入した。イベントでは、iPhoneの使い勝手を向上させるための「磁石」を披露し、電源アダプターやイヤホンを同こんしないことを発表した。
現地時間の13日午前10時からオンラインで開催した発表会では、小型の「iPhone 12 mini」、メインストリームの「iPhone 12」、カメラやビデオの機能を強化した「iPhone 12 Pro」、さらに画面を大きくした「iPhone 12 Pro Max」の4モデルを発表した。
5Gやカメラ、ビデオ機能、ディスプレー解像度の向上といった予想通りの進化に加えて、ユーザーの利用シーンを想定したプロダクトの進化が垣間見られた。
磁石でアクセサリー装着可能に

毎日必要な充電の使い勝手も改善する。磁石によって本体とアクセサリーを装着できる「MagSafe for iPhone」を実装。無線充電の際に、アダプターの接点を、iPhoneのきょう体の適切な場所に配置できるようにした。MagSafeは従来、ノート型のMac Bookシリーズにおいて、電源アダプターと本体の装着に使われていたものだ。
MagSafeによって、iPhoneの背面にケースのほかカードホルダーなどのオプションを容易に装着できるようになる。発表会ではMagSafe対応のカードホルダーに、クレジットカードのアップルカードを入れていた。
さらにiPhoneとスマートウオッチの「Apple Watch」を同時に充電できる小型のワイヤレス充電器も発表した。旅行や出張の際には、折りたたんで容易に持ち運ぶことができる。周辺機器ベンダーからもMagSafe for iPhone対応装置が販売される予定で、アップルの担当者はエコシステムを作りたいと強調した。
アダプターとイヤホンを同こんせず
今回、すべてのモデルにおいて、充電用の電源アダプターとイヤホンのパッケージへの同こんをやめた。
環境、ポリシー&ソーシャルイニシアティブ リサ・ジャクソンVPは「顧客は既に7億本以上の(アップル標準インターフェースである)ライトニング対応のイヤホンを持っている。また多くの顧客が無線ヘッドホンでワイヤレス体験に移行している。Appleの電源アダプターは世界に20億個以上存在する」と説明する。
電源アダプターとイヤホンを除いたことで、商品パッケージを薄くし、容量を小さくできる。出荷用のパレットに70%多いパッケージを積むことが可能になるという。それが流通段階でのトラックなどによる炭素排出量の削減につながる。「これらiPhone 12で行った変更で年間200万トン以上の炭素の排出削減になる。これは45万台の自動車が年間に出す炭素と同様だ」(ジャクソンVP)。
画面ガラスは4倍丈夫に
スマートフォンが生活や仕事に浸透するなか、きょう体を落下させて画面にひびを入れてしまっているユーザーも少なくない。
今回、アップルはiPhoneに画面表面のガラスを供給する米コーニングと協力して、画面の強化にも取り組んだ。「セラミックシールド」と呼ぶ技術で、高い温度で結晶化することで密度を高めて硬度を増し、透明度も保ったという。
セラミックシールドを採用した結果、「ポケットから落下した際に画面が割れない可能性が4倍高まる」(iPhoneプロダクトマーケティング カイアン・ドゥランス VP)としている。
今回のiPhone 12は、これまでのiPhoneのスペックで十分な顧客に対しても、日常の利用のしやすさで訴求するプロダクト戦略と言える。