カルト的な人気を誇り、熱狂的な「信者」を抱える「カルト・ブランド」という考え方がある。カルト・ブランドの顧客はブランドに対し強い愛着や忠誠心を抱いており、簡単には離れない。日本ではあまりなじみのない概念だが、新型コロナウイルスで新たなフェーズに入るマーケティングのヒントが多くある。

The Gatheringのステージ。カンファレンスの公式ロゴが印象的だ(出所/筆者撮影)
The Gatheringのステージ。カンファレンスの公式ロゴが印象的だ(出所/筆者撮影)

 「The Gathering」が2020年2月19~21日、カナダ・バンフで開かれた。カルト・ブランディングは日本ではあまり知られていない概念だが、北米のブランドがどのようにして消費者を引きつけているのかを知ることができた。

 新型コロナウイルスの影響によって、マーケティング施策がオンラインへと切り替わっている。オンラインの場でいかにしてエンゲージメントを高めていくかが、焦点となる。オンラインではコンテンツに相当なコストを投下する必要があり、新型コロナで体力を削られた中小企業は、コンテンツの配信方法などに工夫が求められる。その際にカルト・ブランディングを考慮することで、顧客のエンゲージメントを効率よく高めていけるだろう。

任天堂やプレステもカルト・ブランド

 3日間で40人以上のスピーカーが登壇し、世界中から1200人以上が参加した2020年のThe Gathering。14年から開かれており、今年で7回目を迎えた。

 ここバンフは、カナディアンロッキー観光の拠点としても知られる町だ。カンファレンス会場は、国定史跡でもあるバンフ・スプリングス・ホテル。2月のバンフは、最低気温が氷点下10度を下回る日もよくある。寒さによる顔の痛みをこらえつつ雪深い中を歩いていくと、突然、歴史のある重厚かつ巨大なホテルが現れる。ここで、世界中から集まった人々が、カルト・ブランディングについて学び合う。

The Gatheringの会場、バンフ・スプリングス・ホテル(出所/筆者撮影)
The Gatheringの会場、バンフ・スプリングス・ホテル(出所/筆者撮影)

 カンファレンスでは毎回、カルト的な地位を確立している(グローバル)ブランドを表彰している。今年は音楽ストリーミングの「スポティファイ」、「コカ・コーラ」、スポーツ用品の「アンダーアーマー」、スナック菓子の「ドリトス」といった、日本でも認知度の高いブランドが受賞した。日本に関係するブランドで挙げるなら、ゲームの「任天堂」や「プレイステーション」も過去に受賞している。

会場の様子。セッション直前はスクリーンにカウントダウンが表示される(出所/筆者撮影)
会場の様子。セッション直前はスクリーンにカウントダウンが表示される(出所/筆者撮影)

 キーノートでは、主としてカルト・ブランディングの概論について解説がなされた。通常のセッションでは、受賞したブランドのブランディングもしくはマーケティング担当者らが、自社のノウハウを共有。また、これらとは別に、予約制の少人数による質疑応答セッションがあるのも同カンファレンスの大きな特徴だ。どのようにカルト的な地位を築いたのか、受賞ブランドの担当者に直接質問できるとあって、ほとんどの枠がすぐに予約で埋まっていた。

カルトで「非合理的な忠誠心」を獲得せよ

 カルト・ブランディングはその名の通り、「カルト宗教」からヒントを得ている。カルト宗教の信者が持つ「異常に高い忠誠心」の秘密はどこにあるのか。この観点において、カルト宗教の学術研究や書籍から、ブランディングやマーケティングに使えるノウハウやメソッドを抽出して生まれたとされる。

 ここで、カルト・ブランディングの定義を確認しておきたい。日本で出版された数少ないカルト・ブランディング関連本『カルトになれ! 顧客を信者にする7つのルール』(マシュー・W・ラガス、ボリバー・J・ブエノ著、安田拡訳、フォレスト出版、2005)では、カルト・ブランディングを「企業、人間、場所、組織を、実際に『好きなブランドのためなら身をささげる信者』の集合体に変えるプロセスを指す」と定義している。

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