ビデオ会議サービスの米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの勢いが止まらない。1日の利用者は2020年3月に同2億人と2019年末の20倍に達した。新型コロナウイルスの影響で、多くの企業が在宅勤務に切り替えたうえ、一般や教育での利用が爆発的に増えた。ただし、想定しない利用でセキュリティー面の問題も表面化した。これらの課題をどうクリアするのか。本社のあるサンノゼ市の⾃宅で指揮する、エリック・ユアンCEO(最高経営責任者)に単独インタビューした。

米ズームのエリック・ユアンCEO。米サンノゼの自宅からズームによるインタビューに応じた
米ズームのエリック・ユアンCEO。米サンノゼの自宅からズームによるインタビューに応じた
●ズーム(Zoom)とは
 米カリフォルニア州サンノゼ市に本社を構えるズーム・ビデオ・コミュニケーションズが提供するクラウド型のビデオ会議サービス。従来のサービスに比べて、相手側でIDを取得する必要がない、さまざまな端末と接続できるなどの特徴がある。使い勝手や画質や音質のよさから利用者が増えた。1対1でつなぐ場合は無料で40分間利用でき、複数の相手と接続する場合にはホスト側の1ユーザー月額14.99ドル(日本は同2000円)などの有料課金となる。
 2800人の従業員のうち半分が本社のある米国での勤務だが、中国拠点の数百人規模の開発陣を活用するのが同社の強みである。今回、カナダと米国間のビデオ会議で利用したユーザーが、データを暗号化する重要情報が中国のデータセンターを経由することを発見。会議の番号を手当たり次第に試し、第三者が会議に割り込んでくる不正行為などとともに問題視された。
 一連のセキュリティー問題に対し、米連邦捜査局(FBI)が警告を出したり、宇宙開発の米スペースX、カリフォルニア州の一部高校、台湾行政院やドイツ外務省などが利用を禁じた。米グーグルはデスクトップアプリを禁止し、Webブラウザーからの利用に制限した。 

なぜここまでズームの利用者が増えたのか。

米国や日本など利用が多い国で特に伸び、ビデオ会議サービスでナンバー1のシェアと評価されている。2019年末に1日約1000万人の利用だったのが、2020年3月には2億人を突破した。なぜか。それはサービスの品質と使いやすさ、そしてイノベーションを実現している点にあるだろう。我々は皆さんのつながりの維持を助けられる立場にあり、それを光栄に思っている。

一般に一気に広がり、セキュリティー対策が追いつかず

ここ最近のセキュリティー問題は何が根本的な問題だったのか。

急速に増えるユーザーをサポートし、サービスを中断させずに提供することが重要責務と考えていた。我々の取り組みはそこに焦点を絞っていた。もちろんプラットフォームやプライバシーの安全性を保証するために努力もしてきたが、期待に応えられなかった。その点について深くおわびをしたい。暗号化の問題についても混乱を認め、謝罪したい。今まさに迅速に対応するための努力をしており、可能な限りしっかりと説明していく。

 根本的なところとして、我々は従来の企業顧客にフォーカスしていた。金融業や通信業、政府機関、大学や医療機関などが挙げられる。しかし、我々は今急に多くの一般ユーザーに利用してもらえるようになった。一般ユーザーは、企業ユーザーと違って組織内のIT部門のサポートがない。企業ユーザーであれば、詳しいIT部門が設定した適切な状態で使うことができる。

教育機関向けの初期設定をセキュアに

具体的にセキュリティー問題にどのように対処していくのか。

発見されたり、報告されたりしたすべての問題について我々は修正している。そして、今後3カ月間は新しい機能の開発を止めて、プライバシーとセキュリティーに多くのリソースを振り向けて、この領域の新たな機能のみを追加していく。

 一般ユーザー向けの利用ケースで、我々のプラットフォームで予期していなかった課題を発見できた。セキュリティーの研究者やジャーナリストの指摘や助言も既存の問題を特定するのに役立っている。こうした問題について、専門家や代表的なユーザーと検証を行い、新たな利用ケースを理解して、セキュリティーを確保していきたい。侵入テストなども実施していく。

 特に教育機関向けに提供するサービスは、参加者が一時待機する仮想ルームや、教師のみがコンテンツを共有できるといった機能を、デフォルトでオンにすることでセキュリティーを高めている。

 新たなユーザーに対して、適切なトレーニング、サポートやツールを提供していくことも重要だ。ユーザーに機能をしっかりと把握してもらい、どのように活用するのがいいのかを理解してもらいたい。

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