新型コロナウイルス封じ込めのため、ニューヨークをはじめとした米国の都市で在宅命令が出されている。そうしたなか米国ではスマートフォンのアプリ利用に大きな変化が出ている。コロナ後の新たな世界に向けたビジネスのアイデアとして、「待機巣ごもり消費」を参考にしてみてはどうだろうか。
米国ではニューヨークやカリフォルニアなど複数の州に自宅待機命令が出されている。それに応じて自宅での生活に応じた消費が始まっている。なかでもスマートフォンアプリで大きな変化が現れている。
スマホユーザーのアプリダウンロードなどを分析している米アップアニーによると、2020年3月15~21日の全世界のゲームを除くアプリダウンロード数は約15億で1カ月前の同時期に比べて14%増となった。アプリ提供者の収入は5億1400万ドル(約550億円)と2%増だ。全世界のゲームアプリは同時期に11億ダウンロードと前月比で21%増。収入は12億7000万ドル(約1370億円)と4%増まで伸長した。
伸びが顕著なのは、健康をサポートするフィットネスやヘルスケア系のアプリだ。
フィットネスだけでなくリラックスも
例えば、フィットネスアプリの「30 Day Fitness」はヘルス&フィットネスのカテゴリーで3位以内を保っていたが、アプリ全体では400~700位で推移していた。それがカリフォルニア州の在宅要請直前から急上昇し、全体でも100位以内に入ってきた。
30 Day Fitnessはインストラクターの動画を見ながら、30日間の室内運動メニューを管理してくれる。利用者がどの場所を重点的に鍛えたいのか、どの程度の負荷をかけるのかなどをきめ細やかに調整するのが特徴だ。
オフィスに行くことはなくなり、マンション内や外での運動も他人と6フィート(約1.8メートル)離れることを求められる。こうした状況で初めてアプリを利用するユーザーも多いのだろう。
体だけでなく心の健康を求める動きも急だ。例えば、リラックスできる音楽などを楽しめる「Calm」はこれまで、休日明けの月曜や火曜日に利用が増えていた。これが3月中旬以降にランキングが上昇。曜日に関係なく、米国のヘルス&フィットネスカテゴリーの無料アプリダウンロード数で2位、有料課金による推定収入でも2位となった。
ニュースアプリで地元情報求める
ここに来て注目を集めているのがニュースアプリだ。メディア情報を集める「SmartNews」のダウンロードが増えている。さらに注目を集めているのが「News Break」というローカルニュースアプリだ。
News Breakは利用者の居住する市や郡(県よりも狭い行政区の場合が多い)、州の単位で、地元メディアや大手メディアからニュースを集めてくる。自分の周囲の新型コロナウイルス感染、公的機関やスーパーなどの情報を求めて利用されていると考えられる。
子供のストレス解消も急務
学校が閉鎖となっており、家庭内でストレスを感じている子供も増えている。そうした子供向けに、「Netflix」や「Disney+」のような動画サービスだけでなく、子供向けの学習や絵本コンテンツのダウンロードも増えている。
学習分野でダウンロードが急増しトップを獲得したのは「ABCmouse.com」だ。2~8歳向けの、読書と数学の能力を向上させるためのアプリである。教師や教育の専門家が開発した1万以上のコンテンツを収容している。
授業は可能な学校から遠隔に移行している。このため学校と生徒が教材をやりとりするアプリも利用が増えている。その代表格が「Google Classroom」である。米国の小中高が休校や遠隔授業に移行した3月の2週からダウンロードが急増。学習用の無料アプリで1位、無料アプリ全体でも4位を獲得している。
子供同士のコミュニケーションアプリ
このほか増えているのが、子供同士のコミュニケーション用のアプリだ。
フェイスブックメッセンジャーの子供向け「Messenger Kids」や、グループで動画で情報をやりとりできる「Houseparty」などのアプリのダウンロード数も増えている。Messenger Kidsは家族内や子供と友人の間での利用を想定。親が子供の接続先をコントロールできる機能がある。
アップアニーによると、Housepartyは3月15~21日に世界で約200万ダウンロードされたと見られ、1カ月前の約13万から急増した。
「ZOOM」が無料アプリのトップに
アップアニーによると、20年2月から全世界でのビジネスアプリ利用が急増している。会社や特定のネットワークにセキュアな状態で接続するためのVPNや、紙のドキュメントを電子化するスキャナーアプリの利用が増えているようだ。
最も需要が急増しているのは、オンラインでの会議アプリである。
なかでも「ZOOM Cloud Meetings」は3月16日から無料アプリの1位を維持している。カリフォルニア州のシリコンバレーとサンフランシスコをあわせたベイエリアが自宅待機命令を出した日だ(17日0時から実行された)。スマホやタブレット、パソコンだけでなく携帯電話などさまざまな端末と複数人での会議を簡単にセットアップできるのが特徴だ。アップアニーによると、3月15~21日に約750万のダウンロードがあったと推定される。1カ月前は約110万だった。
「Teams」もオンライン会議分野でZOOMに続くダウンロード数となっており、全体でも無料アプリの3位を維持している。提供元であるマイクロソフトのオフィスソフトなどとともに利用するビジネスユーザーが増えている。
マイクロソフトが同ソフトの3周年にあわせて公表した情報によると、3月18日時点で利用者は4400万人になった。在宅命令もあった同日までの1週間で利用者が1200万人増えたという。アップアニーによると、3月15~21日に全世界で約320万ダウンロードされた。1カ月前の6倍以上だ。
次回はレストランなどでの店内飲食の休止命令に伴う、消費への影響を見ていく。需要が増えているテークアウトや宅配サービスの動向を紹介する。