フランスのスポーツ用品の世界最大手であるデカトロンは、米サンフランシスコの店舗で先端テクノロジーの活用に取り組んでいる。自社でプライベートブランド(PB)を企画し製造するメリットを最大限生かすほか、新たなサービスを導入しやすくする狙いがある。
デカトロンは世界52カ国に約1600店の店舗を持ち、業界1位の約1兆3000億円(2018年度)の売上高を誇る。その原動力となっているのが、PBを企画し製造するSPA(製造小売り)のビジネスモデルである。利益率を高めるだけでなく、テントであれば持ちやすく、サングラスであれば独自に開発した軽くて丈夫なレンズを採用するなどで、顧客の支持を集めている。
米サンフランシスコの店舗では、こうしたSPAの強みを最大限に生かすテクノロジーを試している。1つ目がレジレスの決済だ。店舗内の各所に大きな籠を内蔵したカートが置かれている。この籠に商品を投げ込むだけで品物を認識し、合計額を計算できる。その情報は、それぞれの店員の持っているハンディ端末に転送される。そして顧客がクレジットカードを利用することで、その場で決済ができる。
デカトロンUSAのCIO(最高情報責任者)兼CTO(最高技術責任者)のトニー・レオン氏は「商品を1つずつスキャンするのに比べて、決済にかかる時間を大幅に短縮できる」と説明する。店員にとっては顧客に商品を説明するなどの対応時間を増やすことができる。
PB商品にICタグを埋め込み
当然ながらこの仕組みは商品に対し、IDを割り振られた無線ICタグが取り付けてあるのが前提だ。店舗内の商品の98%に無線ICタグが付いているという。ただ、デカトロンの店舗ではあることに気づく。値札など見える場所に無線ICタグが付いていないのだ。
実はデカトロンはPB商品の多くに製造段階で無線ICタグを埋め込んでいる。例えば、シューズであればソール部分に無線ICタグが埋め込まれている。バスケットボールであれば内部に装着されている。
無線ICタグには個別のIDが割り当てられており、販売だけでなく製造から流通の個体管理でも活用。ICタグの追加によるコスト増を吸収しているという。商品に問題があった場合も、その商品が、いつ、どこで製造されたのかも特定が容易だ。なお、プライバシーに配慮して、店舗で顧客が購入した決済後はIDを無効にしているという。
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