米サンフランシスコでスポーツをテクノロジーで支援するスポーツテックのイベントが開催された。サンフランシスコジャイアンツが本拠地とするオラクルパークに500社から選ばれた12社のスタートアップがピッチを繰り広げた。2020年の東京オリンピック・パラリンピックとその先を見据え、日米、そして世界のスポーツやテクノロジーの関係者、投資家が一堂に会した。

SPORTS TECH TOKYOのプログラム成果を発表した、サンフランシスコジャイアンツが本拠地とするオラクルパーク(米サンフランシスコ)
SPORTS TECH TOKYOのプログラム成果を発表した、サンフランシスコジャイアンツが本拠地とするオラクルパーク(米サンフランシスコ)

 スポーツはこれまでテクノロジーの活用が十分でなかった分野で、市場の拡大が見込まれている。日本政府はスポーツ関連の市場を2015年の約5.5兆円から、2025年までに約15兆円へ拡大することを目指すとしている。

 スポーツテックはそうした目標を後押しする動きと言え、AI(人工知能)や画像処理技術を活用し、イノベーションを起こそうとする動きが活発化している。

 電通と日系ベンチャーキャピタル(VC)の米スクラムベンチャーズは2019年8月20日、「SPORTS TECH TOKYO」と呼ぶスポーツテックのスタートアップを支援するプログラムの発表会を米サンフランシスコで開催した。2019年1月に本格的に立ち上げた同プログラムは、100人以上の専門家が助言を与えるメンターとして参加しているのが特徴だ。メンターの所属は、NFLのサンフランシスコ49ersや大リーグのMLB、米ナイキ、米ニールセンスポーツなどさまざまだ。スポーツ関連の投資家も注目している。

サンフランシスコ49ersの最高投資責任者(中央)やアディダスベンチャーズのディレクター(左から2番目)など、スポーツ関連の投資家も参加した
サンフランシスコ49ersの最高投資責任者(中央)やアディダスベンチャーズのディレクター(左から2番目)など、スポーツ関連の投資家も参加した

 プログラムオーナーであるスクラムベンチャーズの宮田拓弥ジェネラルパートナーは「スポーツを対象にした大規模なファンドは世界にいくつかあるが、ここまで大規模で、資金調達からビジネス育成までを対象にしたスポーツテックのプログラムはない」と説明する。

 今回のプログラムでフォーカスしたのはスポーツビジネスをマネタイズするために欠かせない3分野だ。テクノロジーの活用によるファンエンゲージメント、スタジアムの高度化、アスリートの支援である。12社の半数がファンエンゲージメントで、アスリートとスタジアムがそれぞれ残りの半分を占めた。地域別には、半数の6社が米国企業で、日本やイスラエルなど他の国から1社ずつ6社が選ばれた。

AI画像解析でファン好みの動画を提供

 大きなトレンドとなっているのがAIを利用した画像処理によるパーソナライゼーションだ。

イスラエルのPixellotは1台のカメラで、複数のカメラオペレーターで撮影したかのような動画を生成できる(出所:同社講演資料)
イスラエルのPixellotは1台のカメラで、複数のカメラオペレーターで撮影したかのような動画を生成できる(出所:同社講演資料)

 例えば、イスラエルのPixellotは、画像をAIで解析して自動で編集し、特定のプレーヤーにフォーカスした動画を生成できるソリューションを提供している。複数のレンズを持つ1台のカメラで試合を撮影し、それをAIで解析するというものだ。AIが人間のカメラオペレーターの動作をシミュレートすることで、あたかも複数人で撮影しているような動画を作成できるという。

インドのedisn.aiはAIで選手を認識し、ファンごとに異なる画面を提供できるようにする(画像クリックで動画が再生されます、出所:同社講演資料)

 インドのedisn.aiもAIで画面内の選手を特定するソリューションを開発している。ファンごとに異なる画面で、お気に入りの選手の成績情報を表示したり、選手の身に着けているシューズなどを販売するeコマースと連携したりすることが可能となる。

 米Reelyはスポーツ映像から動画を抽出しリアルタイムにタグ付けできるソリューションを提供している。動画認識技術を利用し、ハイライトビデオを低コストかつ短時間に作成できるという。

1ディスプレーで数万パターンの映像を提供

米Misapplied Sciencesのソリューションは1つのディスプレーで異なる映像を周囲の人に見せることができる(画像クリックで動画が再生されます、出所:同社講演資料)

 米Misapplied Sciencesはハードウエアも活用し、パーソナライゼーションの高度化を図る。1つのディスプレーで異なる映像を周囲の人に見せることができる。角度によって異なる映像を、特別なめがねなど無しに楽しむことができる。理論上は数万人規模で異なる映像を見せることが可能だという。

 VR・AR(仮想現実・拡張現実)、動画を活用するスタートアップも多い。

複数のカメラから360度の映像データを生成する米4D Replayのソリューション(画像クリックで動画が再生されます、出所:YouTubeの同社資料)

 例えば、米4D Replayは1つの物体にフォーカスした360度の立体画像を生成できるソリューションを提供している。複数カメラの動画像から必要なデータを収集し、数秒間で処理できるという。日本のKDDIも野球やバレーの中継で活用しているという。例えば、ホームランボールから360度のアングルで球場を見渡すといったことが可能になる。

 スペインのMobile Media Contentは3Dデジタルコンテンツのライブラリーを提供している。利用者がチケットを購入しようとしている席からの眺望を事前に確認できるようにした。実際の観戦シーンに近い画像を見せることで、納得したうえで購入してもらうことが可能になる。

 米SportsCastrは、ユーザー自身がキャスターとなってスポーツを解説しながら中継できるプラットフォームを開発した。テレビ中継などを見ながら、著作権に配慮して主として自身の顔を映して解説する。用途特化型のYouTubeとも言える。

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