5月8日、米ライドシェア大手のウーバーテクノロジーズが上場した。直前には最大のステークホルダーと言える契約ドライバーが全米でデモを展開するなど課題が山積みだ。シェアリングサービスが普及しつつある日本はここから何を学ぶべきか。

ウーバーの米本社周辺で抗議活動を行うドライバーたち(5月8日午後、米サンフランシスコ)
ウーバーの米本社周辺で抗議活動を行うドライバーたち(5月8日午後、米サンフランシスコ)

 5月8日正午、米ライドシェア大手、ウーバーテクノロジーズの本社の前には100人を超える人だかりができていた。集まったのはウーバーや同業のリフトのドライバーたちだ。

 「CEO(最高経営責任者)の年収は4300万ドル、我々の時給は9ドル」といった横断幕を掲げ、ウーバー本社の周辺をデモ行進した。ニューヨークやロサンゼルスなどでも同様の行動が見られた。デモに加えてアプリをオフにして、顧客からの発注を受けないストライキも呼びかけられ、ごく一部のドライバーが参加したもようだ。

8日のデモで配布されたビラ
8日のデモで配布されたビラ

 ドライバーのデモから2日後の5月10日、ウーバーはニューヨーク証券取引所に上場した。時価総額は上場時点で約760億ドル(約8兆3600億円)となった。ただ、上場後の株価は振るわない。IPO(新規株式公開)時の売り出し価格を45ドルと、事前想定の44~48ドルのほぼ下限に設定したものの、上場初日から株価は下落。米株式市場の軟調もあるが、5月29日は40ドル前後で推移している。

 評価額10億ドル以上のユニコーン企業の代表として注目されたウーバーの上場を巡る一連の混乱はなぜ起こったのか。日本は何を学べるのか。冒頭のデモに象徴されるドライバーとの関係からひも解いていく。

契約ドライバーの不満が爆発

 390万人ものウーバーのドライバーは正社員ではない。アプリを通してウーバーから配車の依頼を受ける“個人事業主”だ。案件ごとに個人に仕事が発注される「ギグエコノミー」の典型例である。当然ながら労働組合はないので、5月8日のデモはソーシャルメディアやウェブサイトを通じて告知された。

デモに参加したドライバーの抗議ビラ
デモに参加したドライバーの抗議ビラ

 ウーバーやリフトは運賃から2割を差し引いて残りの8割をドライバーに渡しているとしている。ただデモに参加した男性ドライバーは「前は20%だったが、最近は25%を引かれている。なんでそうなっているのかきちんと説明するなど透明性が必要だ」と不満をぶちまけていた。詳細は不明だが、8割や6割を徴収されるケースもあるとのポスターを持っていたドライバーもいた。

都市部では営業効率の低下も

 取り分が下がるうえに、効率も悪くなっている。

 シリコンバレー在住でリフトと契約する日本人ドライバー吉元逸郎氏は「そもそもサンフランシスコなど都市部ではウーバーやリフトの車両が増えて、ドライバーが時間当たりに稼げる金額が減っている。乗車を多くこなすドライバーへのインセンティブも減らされている」と解説する。

 ウーバーのドライバー向けのサポートについて不満をぶつける声も多かった。ウーバーと契約する別の男性ドライバーは「アプリで指定された場所で乗客を拾ったのに違反となることがある。罰金で1週間分の売り上げが吹っ飛んだよ」と怒る。

 これ以外にもっとも大きな不満が、生活コストの上昇である。サンフランシスコとシリコンバレーを合わせたベイエリアでは、住居費や食費が年々上昇している。リフトと契約する女性ドライバーは「現在の収入では、家族が暮らせていけない。最近はガソリン価格も上昇している」と訴えた。