世界最大級のDIYの祭典「Maker Faire(メーカーフェア)」が米カリフォルニア州サンマテオで開催された。自作のための工具や電子機器などが展示され、毎年子供から大人まで約10万人が参加する。ものづくりの楽しさを伝える同イベントには、必要なものを自作する初期のシリコンバレーの気質がいまだに流れている。
「Maker Faire(メーカーフェア)Bay Area」は米サンフランシスコ郊外にあるサンマテオのイベントスペースで2019年5月17日から19日まで開催された。
メーカーフェアはシリコンバレーとサンフランシスコをあわせた「ベイエリア」の縮図のようなイベントだ。2006年に始まって今年で14回目になるが自作精神を持った、エンジニアやデザイナー、生産者などが集い、それをめがけて約10万人が詰めかける。さまざまな工作教室が開催され、大人だけでなく子供の姿も目立つのが特徴だ。出展者同士も活発に情報交換をしている。
自作精神を体現する12歳
メーカーフェアに出展している個人やグループから成る「メーカー」の特徴は、徹底した自作へのこだわりだ。来場者に対しては、どのようにカスタマイズして自分の作品として取り込んでもらうのかの情報も熱心に提供する。
そうした中で注目を集めていたのが12歳の少年、オンカー・ゴヴィルネア氏が出品していたスマートウオッチ「O Watch」だ。6歳の時にメーカーフェアに来てインスパイアされて開発を始めたという。「O Watchは子供たちにプログラミングの世界を紹介し、先生や教育者に多くのリソースを提供してきている」(ゴヴィルネア氏)。
O Watchは小型のマイコンボード「Arduino」を利用したもので、ユーザーがプログラミングして機能を自由にカスタマイズできる。ケースも自作できるように3Dプリンター用のデータを公開している。バンドも自由に変えることができる。
大手メーカー並の基板実装が可能に
こうしたO Watchのようなプロダクトを一から開発するのを支援するメーカーも多く出展した。
有志のプロジェクトであるMagicBoxLabは、小型の電子部品を基板に実装できる装置「REFLO Air」を展示した。
「0402」と呼ぶ米アップルのiPhone 4に搭載されて話題になった米粒大のコンデンサーも基板の表面に実装できる本格的なものだ。0402のコンデンサーなどの先端電子部品も、Digi-Keyのような電子部品販売会社のサイトで個人でも入手できる。MagicBoxLabの水野正博氏は「個人でも自分で開発した基板をネットなどで販売している人、企業であれば試作などに活用できる。手間と時間を大幅に削減できる」と説明する。
現在のところ電子部品はピンセットを使って手動で載せる必要がある。クリーム状のはんだの上に電子部品を載せて、そのうえで熱する。「来場者からコンパクトで使いやすいという意見があったが、やはり部品を自動で載せられないかという要望が多かった。来年チャンレンジしていきたい」(MagicBoxLabの斉藤鷹之氏)。
水野氏は米サンノゼで製品開発のコンサルティングや回路基板などのプロトタイピングや製造などを支援している。斉藤氏は福島県の電子部品商社オーミック電子に所属している。メーカーフェアではこうした有志のメーカーがプロジェクトを組成し、参加しているケースが多い。
チョコレートの自作機を開発
ハードウエアやソフトウエアを開発する試みが多いなかで、異彩を放っていたのが家庭向けチョコレート製造機だ。
コーヒー関連のビジネスに携わっていたネート・サール氏は、米CocoTerraを創業して取り組んでいる。
サール氏によるとチョコレートの家庭向け製造機は世界初だという。「家庭には、米の炊飯器やアイス製造機もある。ならばチョコレートもあっていいだろ。ココアの量を調節しながら、自分好みのチョコレートを作ることができる」(同)と話す。
スマートフォンでレシピを選択したり、自身で見いだした設定をセットしたりする。カカオから作ったココアパウダーや砂糖などの材料を、かくはん部に入れて砕いて混ぜ合わせ、約2時間で完成する。
現時点では試作機で販売していない。興味を持った来場者は、ブースでメールアドレスを書いてその場を立ち去っていた。
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