米IBMは2019年2月13日、米サンフランシスコで開催中のカンファレンス「Think 2019」において、今後5年間で実現していく5つのテクノロジーによるイノベーション「5 in 5(ファイブ・イン・ファイブ)」について説明した。今年は気候変動や人口急増などに対応するための食物関連のテクノロジーを取り上げた。

「5 in 5」を発表するIBMの研究者。右端がクラウド&コグニティブソフトウエアのアーヴィン・クリシュナ上級副社長
「5 in 5」を発表するIBMの研究者。右端がクラウド&コグニティブソフトウエアのアーヴィン・クリシュナ上級副社長

 「食物が今年のテーマだ。生活を変えていくものであるとともに、最も切迫した問題である。気候変動や人口増で食物に負荷がかかっている。サプライチェーンの各段階で無駄をなくし、これまでよりも持続可能な世界を作る必要がある」

 プロジェクトを統括するIBM クラウド&コグニティブソフトウエアのアーヴィン・クリシュナ上級副社長はこう切り出した。

 その後、全世界のIBMリサーチの研究者が育成や収穫、配送や検品、廃棄などのサプライチェーンで今後実現し、導入されていく可能性のあるテクノロジーを披露した。なかでも注目されるのが、食物の安全に関するテクノロジーだ。

有害菌をAIで発見し、流行を事前に食い止める

スマホによる有害菌の発見を説明する、IBMリサーチ・ワトソン研究所 IBMフェローのドンナ・ディレンバーガー氏
スマホによる有害菌の発見を説明する、IBMリサーチ・ワトソン研究所 IBMフェローのドンナ・ディレンバーガー氏

 IBMリサーチ・ワトソン研究所 IBMフェローのドンナ・ディレンバーガー氏は有害な食物から守るためのテクノロジーを示した。

 スマートフォンにセンサーを装着し撮影するだけで、AI(人工知能)が画像を解析し、有害なバクテリアを含んでいるかどうかなどを見つけることができるというものだ。「現在、病原菌のテストには2日かかっているが、それが数秒でできるようになる」(ディレンバーガー氏)。

スマホに接続したモジュールで取得した情報
スマホに接続したモジュールで取得した情報

 この画像解析技術はワインや油、食料品のラベルの偽物を発見するのにも応用可能だという。

 IBMリサーチ・アルマデンのジェラウド・デュボイス氏も、有害な菌から人体を守るテクノロジーについて紹介した。

 マイクロバイオームという食物にも人体にも存在する一般的な菌をビッグデータで解析し、体に悪い影響を及ぼす因子や変化点を発見しようとしている。「どこでどのように変化が起きるのか、菌が猛威を振るう前に予測して防ぐことが可能になる」(デュボイス氏)

菌のビッグデータ解析結果を説明するIBMリサーチ・インディアのスリラム・ラガヴァン氏
菌のビッグデータ解析結果を説明するIBMリサーチ・インディアのスリラム・ラガヴァン氏

10%のリサイクルを100%に

 「ゴミをリサイクルに出しても多くがリサイクルされていない。特にプラスチックゴミは危機のまっただ中だ。仮にいまプラスチックの利用をやめても世界中に残っているものがある」

 IBMリサーチ・アルマデンのジャネット・ガルシア氏は、廃棄物問題に取り組んでいる。

 一例として、ペットボトルを再利用するテクノロジーについて紹介した。他の食物などと一緒に加熱しても、ペットボトルだけが材料の塊に変化。その塊を再度ペットボトルとして成形可能だという。このほか買い物袋など様々なものへの適用を目指している。ガルシア氏は「米国では今10%しかリサイクルできていない。これを100%にするテクノロジーを開発している」と意気込む。

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