全米小売協会(NRF)は2019年2月5日、米国の小売業の同年の売上高予測を発表した。前年比で最大4.4%成長し、418兆円以上の産業になる見通しだ。ネットなど無店舗業態の好調がけん引する。ネットで購入し、店舗で受け取る「BOPIS」が、リアル店舗を持つ小売業にとっても重要なキーワードになっている。

全米小売業の売上高予測(出所:NRF)
全米小売業の売上高予測(出所:NRF)

 「(中国との)貿易戦争、政府機関の閉鎖の影響があっても、小売業の売り上げは伸び続ける」

 NRFは5日に発表した予測の冒頭でこう指摘し、2019年は前年比で3.8から4.4%成長し、3兆8000億ドル(約418兆円)以上になるとの予測を示した。18年は同4.6%成長で3兆6800億ドルだった。

2019年の小売業の前年比成長率は微減の見通し(出所:NRF)
2019年の小売業の前年比成長率は微減の見通し(出所:NRF)

 NRFのチーフエコノミストであるジャック・クレインヘンズ氏は、「消費者はここ数年のどの時点よりもいい状態にある。今後1年間は雇用市場の継続的な強さが重要となり、それが消費者所得と支出を支えていく。株式市場の浮き沈み、その他の不確実性があるが、経済は好調で確実に成長していく」と説明する。

 強気の予測の背景には、ネットや無店舗の販売の伸びがある。18年に前年比で10.4%伸長し、19年も10~12%の増が見込まれるとしている。

ネット注文し店舗で受け取る「BOPIS」

 ネット販売もリアル店舗を持つ大手が力を入れ始めており、競争が激しくなっている。米国の消費者は送料の水準に敏感になっており、体力のある大手の小売事業者が優位になっていく可能性がある。

ネットの商品を実店舗で受け取る「BOPIS」を利用する理由(出所:NRF「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」)
ネットの商品を実店舗で受け取る「BOPIS」を利用する理由(出所:NRF「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」)

 NRFが2019年1月に公表した「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」では、BOPISを注目キーワードとして挙げている。

 BOPISはバイ・オンライン・ピックアップ・イン・ストアの略で、ネットで買った商品を店舗で受け取ることを指す。NRFは「消費者が送料を節約するためにBOPISを使い始めている。半数以上がBOPISに気づいており、そのうち7割が利用している。そして、65%と利用者の多くはショッピング体験が向上したと言う」と説明する。

 ネット専業の事業者は、価格競争では米アマゾン・ドット・コムに対抗するのは難しく、顧客に受け入られる特徴のあるサービスが求められる。例えば、カジュアル服のネット通販の米スティッチフィックスはAI(人工知能)を活用し、顧客が気に入る服を提案する月額サブスクリプションサービスを展開し、ビジネスを拡大している。

サブスクリプションサービスを利用する理由(出所:NRF「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」)
サブスクリプションサービスを利用する理由(出所:NRF「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」)

 「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」によると、サブスクリプションサービスを贈り物として利用するケースが増えているという。自身が利用して満足した結果、大事な人にも使ってもらいたいという心理が働いているという。

 「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」では今冬注目の動向として、4つの実験的な取り組みを紹介している。

今冬注目の実験的な取り組み(出所:NRF「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」)
今冬注目の実験的な取り組み(出所:NRF「2018/2019 ウインター・コンシューマー・ビュー」)

 1つ目が、化粧品の米カバーガールのニューヨークの店舗におけるグーグルの音声AIアシスタントを利用した、顧客対応だ。2つ目が、米ウォルマート、スポーツ用品を販売するカナダのルルレモン・アスレティカ、ネットで家庭用品を販売する米フェイフェアのホリデーシーズンにおける各種の施策。3つ目が、寒い部屋の中でダウンジャケットを試着してもらうカナダのカナダグースの取り組みだ。最後が米スターバックスや100円ショップにあたる米ダラー・ツリーのモバイルアプリにおけるゲームの提供である。

 小売業は全米で最大規模の産業であり、米国の景気自体を左右する。NRFのクレインヘンズ氏は「インフレ率と金利は今年も低水準を維持すると見込まれており、小売業の売上高は最近のガソリン価格の引き上げによって支えられている」と分析する。