世界最大の家電・IT見本市「CES 2019」で見えたモビリティの最新トレンドを、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)文脈で読み解く本特集。第5回は、空飛ぶクルマや自動運転のオンデマンド型シャトルサービスのデモなど、MaaS時代に活躍するであろう次世代モビリティを専門家がピックアップした。

米ヘリコプター製造大手のベル・ヘリコプターとヤマトホールディングスは、“空飛ぶトラック”を2020年代前半までに実用化する計画を発表した
米ヘリコプター製造大手のベル・ヘリコプターとヤマトホールディングスは、“空飛ぶトラック”を2020年代前半までに実用化する計画を発表した

 2019年1月に開催された「CES 2019」のモビリティ分野の動向をMaaS文脈で読み解く本特集は、いよいよ最終回を迎えた。本稿では、今や世界120社以上が開発競争を繰り広げ、日本でも2020年代のサービス開始を目指して政府が推進している「空飛ぶクルマ」や、MaaSを構成する次世代モビリティサービスの筆頭候補である「自動運転シャトル」など、CESで行われた注目の発表やデモンストレーションについてリポートしたい。

 KeyWord:【空飛ぶクルマ】 

ベル・ヘリコプターが展示したコンセプトモデル
ベル・ヘリコプターが展示したコンセプトモデル

 まず、今回のCES会場で異彩を放っていたのが、米軍輸送機の「V-22 オスプレイ」などを手掛ける米国のベル・ヘリコプターが展示した空飛ぶクルマのコンセプトモデル、「Bell Nexus」だ。ハイブリッドの垂直離着陸機(VTOL)で、乗客4人とパイロット1人の計5人が乗れる機体は、イメージしていたよりもかなり大きかった。6つのローター(回転翼)を備えており、最高時速は150マイル(約241km)、航続距離も同じく150マイル(約241km)。垂直に離着陸できるから、一般的なヘリポートでも運用が可能になる。飛行中は、飛行データや観光情報などが大きな窓ガラスにAR(拡張現実)で映し出されるという。

 実物大の展示の他、大画面のステージスクリーン上にコンセプトムービーが常時放映。Bell Nexusを使った空飛ぶタクシーが実現された近未来の交通社会を感じられる展示だった。また、会場では一定時間ごとに離着陸モードから運行モードへの切り替え(ローターが90度起きたり寝たりする)デモが行われ、そのたびに多くの人だかりができた。日本のアニメでいえば、「機動戦士ガンダム」や「新幹線変形ロボ シンカリオン」のようでもあり、トランスフォーメーションの様子に未来を感じると共に、しばらくはそれ自体がエンタメとなり、空飛ぶタクシーの“売り”の1つになるのだろう。

ベル・ヘリコプターとヤマトが共同開発する電動垂直離着陸機(eVTOL)のコンセプトモデルが展示された
ベル・ヘリコプターとヤマトが共同開発する電動垂直離着陸機(eVTOL)のコンセプトモデルが展示された

 もう1つ、ベル・ヘリコプターで注目を集めたのが、日本のヤマトホールディングスとの発表だ。両社は物流用の電動垂直離着陸型機を共同開発しており、2020年代半ばまでに配送サービスでの導入を目指すとしている。機体はドローンと飛行機の中間に当たるサイズ感で、機体中央のボックスに荷物を載せて時速160㎞以上で無人飛行し、物流拠点間の輸送に役立てるという。

 ブースで行われた2社のパネルディスカッションでは、冒頭で小型版による飛行試験の様子が紹介された。また、ヤマト運輸のロゴは親ネコが子ネコを運ぶモチーフであることが説明された後、プレゼンに立ったヤマトの牧浦真司常務が、「我々は小包を運んでいるのではない。(親ネコが子ネコを想うように)心を運んでいるのだ。その精神は、今後も忘れない」という言葉が印象的だった。空を飛ぶ次世代モビリティが、物流も変えていくことに期待したい。

 KeyWord:【自動運転シャトルサービス】 

米Viaが行った自動運転のデモンストレーション
米Viaが行った自動運転のデモンストレーション

 CES 2019の屋外展示で注目したいのが、オンデマンド型シャトルサービスを展開する米Via(ヴィア)が行った自動運転のデモだ。Viaは日本ではあまり知名度が高くないが、複数の乗車ニーズと車両に対する最適マッチング技術に優れる企業。日本では、森ビルと連携してオンデマンド型シャトルサービス「HillsVia(ヒルズ・ヴィア)」の実証実験を18年8月から行っている。このViaの乗り合いマッチング技術およびサービスは、CES 2019で多く展示されたシャトル型モビリティがサービス化の道を歩むに当たって、有効なソリューションである。

 今回の展示では、乗り合いだけでなく自動運転時代を想定したサービスの提案も盛り込まれていたのが興味深い。デモでは、自動運転車両メーカーである英Aurrigo(オーリゴ)の「Comet Mobility」(小型のモビリティ)を活用。質問応答・意思決定支援システムの「IBM Watson(ワトソン)」を搭載しており、音声認識に対応している。実際に乗車すると、まず案内役のスタッフに「Hello Watson、……」などと、モビリティ側と対話するためのいくつかのコマンドを学ぶ。車内にはマイクとスピーカーが設置されており、音声対話で行きたい場所やその場所に関する質問など、簡単な会話が可能となっていた。

 デモ会場では都市をイメージしたバーチャルスポットが3つ設定されており、例えば車内で「ロンドンへ連れて行って(実際には英語)」とモビリティに行き先を告げると、実際にそのスポットまで自動走行した。タクシーの乗務員の代わりにモビリティと対話する形だ。今後、乗り合いサービス×無人運転の導入が進む中で、車内体験や運行管理のために音声UIやAI(人工知能)の活用が重要度を増してくる。今回のデモはまだコンセプト段階だが、早期にサービス化を実現していければ、AIの学習効果によって質の高いソリューションに育つ可能性もある。Viaは今後、日本やアジアへの本格進出も積極的な姿勢であるといい、新しいMaaSプラットフォームの軸になり得るだろう。

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