
明日の話題に使えるIT小話
デジタル変革の掛け声は大きいが、具体的に何を実現するべきなのか見定められていない企業は多い。その理由の一つは、デジタル変革時代に備えるべきは「未見の敵」だからだ。長年の競合とやり合うのであれば、いくらでも経験はあるし、30年来殴り合っている敵のやり口もなんとなく分かる。ところが、近年は、全く違う業界からテクノロジーを手にした見たこともない敵が急に殴りかかってくる。このような未見の敵に備えるためには、自分たちの業界のことだけを見るのではなく、さまざまな業界の動向を見ておく必要があるし、そのなかに未見の敵への備えのヒントもある。このような不慣れな他業界の話を噛み砕いて伝える。
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第84回2021.02.26どの会社にもある「昆布の呪い」 その頑張り、本当に客のため?だしを取るのに最上級の昆布を使いたい板前と、コストの最適化を図りたい経営者。形を変えればどの企業にもあり得る構図だが、そこで重要なのは「客に分からないところではなく、喜ぶところにお金を使うべき」という点だ。だが「神は細部に宿る」という掛け声のもと、この当たり前のことをできていない会社は多いのではないだろうか。
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第83回2021.02.19顧客はブランドに何を望むのか? 「信頼」を整理する3つの観点顧客に企業やブランドに対する信頼を持ってもらいたいとき、役に立つのが今から23年前に出版された『信頼の構造』という本だ。著者は「信頼」という言葉を幾重にも分類分けし、その重要性を説く。顧客が望むのはどの「信頼」なのか。改めて確認しておくと進むべき道への迷いがなくなるはずだ。
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第82回2021.02.12アプリ担当者が絶対に知っておくべき、位置データ活用の負の側面アプリを使うとき、何気なく「承諾」をしている位置データの提供。このデータが複数社を経由して米軍にたどり着き、テロ容疑者を殺害するという衝撃的なニュースが報じられている。広告の最適化をしたつもりが、会社を潰しかねないリスクに発展する可能性は、決してゼロではない。
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第81回2021.02.05帝国ホテルと不審者検知システムの共通点 頭の動きをセンシング帝国ホテルのおもてなしには、学ぶべきところが満載だ。よく出てくるキーワードは「目配り」「気配り」で、宴席中の人のある挙動で、用事がある人、あるいは気分が優れない人を見抜くことができるという。図らずもこの同じ動きを不審者検知システムに生かしているのがロシアのセキュリティー企業だ。
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第80回2021.01.2938年前の未来予想図の的中率は? 変化に勝る才能は好奇心のみ「息継ぎができない」。小林幸子さんがボーカロイドの曲に挑戦したとき、その難しさを語った一言だ。歌手にとってボカロは思わぬ進化だったわけだが、このような想定外は、我々の生活のあらゆる部分に存在する。1983年に当時の郵政省が描いた「未来予想図」はどれぐらい当たったのか、何を見落としたのか、答え合わせをしてみよう。
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第79回2021.01.22中小企業の生きる道 DXで仮想的に束ねれば簡単には折れなくなる社員数56人のメーカー「生出」は、火災を契機にBCP(事業継続計画)の重要性を痛感。同業他社と相互支援協定を締結した。単体では弱い中小企業が生き残るためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)を駆使して他社と連携し、共存共栄を図ることが得策ではないだろうか。
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第78回2020.12.25虎ノ門はサンゴのスマートシティ 沖縄の海をそのままIoTで同期沖縄の海を照らす太陽の光や波の動き、海水の流れなどをそのままIoTで同期させる「環境移送」を行っているスタートアップが東京・虎ノ門にある。生態系を守るための「方舟」と言うべき取り組みだ。さまざまな要素を個別に分解せずに、総合的に最適化を図るその手法は、スマートシティの考え方と軌を一にしている。
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第77回2020.12.04迫力の草刈りドキュメンタリーも B2Bマーケティングの情緒訴求まるでヒゲでもそるかのように、3メートルの雑木や生い茂った雑草をバリバリと刈っていく、ドキュメンタリータッチの動画がある。企業が商売相手のB2Bメーカーは合理性を追求しがちだが、B2Cと同様に情緒的な訴求も必要だ。それを指し示す、横河電機のブランディングの取り組みを改めて見てみよう。
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第76回2020.11.27小売業の敵「返品の山」を解決せよ 静脈産業とデジタルは好相性ネット通販の普及に伴って増えるのが「返品」だ。小売業界にとって、その負のインパクトは無視できないレベルになりつつある。返品された商品を再び商流に乗せる「リバースサプライチェーン」を主戦場とする米オトプロは、デジタルを駆使して回収金額の向上に挑む。「動脈」だけではなく、「静脈」に注目すると思わぬビジネスのヒントがあるかもしれない。
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第75回2020.11.20洪水対策と義歯とアパレルの共通点 数学が社会問題を解決する例えば、「アドテク」と「水道」、「洪水対策」と「アパレル」といった、全く関係のなさそうな業種をつなぐことができるのが「数学」だ。イスラエルや日本で、数学を駆使したスタートアップが勃興している。数学を「科学の女王」たらしめるもの、それは社会問題の解決をパワフルに進められる馬力を持った学問だから、といえるだろう。
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第74回2020.11.13銀座に行っていた人がクイックルワイパーをかけるようになるまで巣ごもり消費はクイックルワイパーや虫ケア商品、ペット用品などにまで影響を及ぼした。一方、外出の傾向も大きく変わり、例えば高齢者はコロナ前、コロナ後で行動範囲が狭くなっていることがデータでも分かる。「在宅型消費の変化」「在宅総量の推移」から、ニューノーマルの消費者の動きを定量的に取り上げてみた。
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第73回2020.11.05AIのちょっと怖い話 テクノロジーの魔改造でマーケは変わる?AI(人工知能)は使い方によって、毒にも薬にもなる。偽物をつくるディープフェイクが話題になり、有権者の投票や消費者の購買行動を変えるためにAIを用いることも、原理的には可能になりつつある。テクノロジーの“魔改造”でマーケティングは変わっていくのだろうか。
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第72回2020.10.29膨大かつ無秩序にたまったデータを活用するための「4つの道筋」「データ活用しろ」と言われても、さてどうしたものか。あちこちにたまった膨大なデータを見て、途方に暮れている人も多いのではなかろうか。取り組みとして学びが多いのは米国のサンライト財団だ。日本でもNJSS(入札情報速報サービス)が、データ活用を新たなビジネスとしている。
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第71回2020.10.16値下げしたのに「値上げ疑惑」? 顧客の心情理解はかくも難しい米国民に「失業したら自動車を返品できる」というサービスを実施し、名を上げた韓国の現代自動車(ヒュンダイ)。だがこのさじ加減は非常に難しく、よかれと思ったサービスが、ユーザーに不快な思いを抱かせてしまうこともよくある。大事なのは「心情」と「都合」と「状況」のバランスだ。
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第70回2020.10.09遊びの4要素が全部入り フォートナイトが小学生を魅了するワケ「競争」「ものまね」「運だめし」「めまい」。遊びは必ず4つのうちのどれかに分類ができる。今から60年以上前に社会学者が提唱したものだが、大人気ゲーム『フォートナイト』はこの遊びの4要素全てを満たしている。また、「課金してもゲーム内で有利に働かない」という点は、世界中の子供たちを魅了する遊びの本質だ。
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第69回2020.10.02やぎのうんこに子供が殺到 「その手があったか」のマッチング「草ぼうぼうの荒れた公園がコストをかけずに整備される」「商品価値のない割れたアメがどんどん売れる」。需給双方がハッピーになれるマッチングは、アイデアひとつでつくり出すことができる。そんな文脈設計の好例が、上野動物園の取り組みだ。まずは「やぎのうんこモデル」から紹介しよう。
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第68回2020.09.25赤穂浪士好きはロッキーも好き? 人間とAIのタッグで顧客を誘因顧客のリテンションのために次の手を打つWOWOW。分析結果から最適なスキンケアを提案するポーラ。両社に共通するのは、人間とAI(人工知能)がお互いの得意分野を生かし、協調してユーザーにメリットを提供することで囲い込みに成功しているという点だ。この「ケンタウルス・モデル」が勝ちパターンの一つになりつつある。
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第67回2020.09.18ダブルチェックの功罪 京大病院の挑戦に学ぶ、ルールの見直し方患者の薬や注射を取り違えないために、医療現場で必須とされていたダブルチェック。この有効性を疑問視する、非常に興味深い資料がある。長らく会社で“神聖視”されてきた不可侵なルールであっても、果たして本当にそれが有効かつ効率的なものなのか、一度立ち止まってみるのもいいかもしれない。
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第66回2020.09.11吸い殻でメッシに投票? 2つの目的を1個の仕掛けで解決する方法「世界最高のサッカー選手はどちらか?」という投票を促す吸い殻入れ、男性用トイレにある「的」のシール……。これらは自然な目的達成も促すが、そこには「目的の二重性」がある。会社でも、複数の課題を同時に解決する仕掛け・アイデアがないか考えてみるとよいだろう。
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第65回2020.09.04あなたの会社のZoom会議に、AIが違和感なく参加する日は近い禁煙を促すための切り札として、世界保健機関(WHO)が採用したのは、チャットボットAIのフローレンス。まるで人間と話しているかのように禁煙までの道筋をアシストしてくれる。新型コロナによってコミュニケーションのオンライン化が急速に進んだ今、気づかない間にテレカンにAIが参加してファシリテートしている……そんな時代も近いのかもしれない。
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第64回2020.08.21コストセンターをドル箱に変えた「セブン銀行」に学ぶ起業家教育起業家教育のなかで使われる概念の一つに「手中の鳥の原則」というものがある。企業でこの原則を貫いているように見えるのが、コンビニATM事業最大手のセブン銀行だ。いくつかの所与の手段を用いて、新しい目的を達成していくその姿勢から、私たちが学べることは多い。
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第63回2020.08.07「子供に自発的に勉強させる」という難題に挑んだコクヨ「子供に宿題を進んでやらせる」。世界中の教育関係者が敗れ去ってきたこの難題に、コクヨが挑んだ。その名も「しゅくだいやる気ペン」。IoTを駆使し、子供を勉強に熱中させる仕組みが随所に施されている。そもそもスタディーとは、もともとは「夢中になっている」という意味。テクノロジーの革新で、熱中をつくり出しやすい環境は整ってきている。
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第62回2020.07.31ホンダの「A00」に込められた思い 会社の社会的役割を考え抜く会社が果たすべき社会的役割が今、改めて問われている。ホンダはそれをプロジェクト検討の際に「A00」という番号で示し、自社が社会で果たすべき役割を問いかけている。トップ自らが旗を振るのがSOMPOホールディングスグループ。保険会社からの脱却を果たすための本気のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進している。
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第61回2020.07.17清掃作業をITで効率化せよ データとロボットの活用で挑む最前線人類が営みを続ける限り、決してなくすことのできない清掃という面倒な作業。一見単純作業に見えるが、いつどのぐらいの汚れやゴミが発生するか分からず、意外に効率化が難しい。ハイテクゴミ箱やオフィス用清掃ロボットなど、ITの活用で非効率を解消する動きが進んでいる。
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第60回2020.07.10米で2番目にNPSが高いペロトン 「マーケティングは宗教」を体現コロナ禍の今、全米で最も注目されている企業の1つが、2012年からオンラインフィットネスを展開していた「ペロトン」だ。だが好調の理由は新型コロナによる“追い風”だけではない。徹底した顧客とのタッチポイントの強化で、ユーザーを引き付けている。そのマーケティングの普遍性は宗教さながらだ。
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第59回2020.07.03客の足元は見ない 隙間にそっと入り込む「寄り添い」を志向せよダイナミックプライシングで「雨の日に傘を高く売る」ようなことは、顧客に嫌がられる。足元を見ているように思われるからだろう。では、「足元を見る」の逆は何だろう。ここでは「寄り添う」であると考える。「寄り添い」の実装事例を、販促やインターフェースの研究事例の中から紹介したい。
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第58回2020.06.19「非効率」を撲滅 ネットフリックスが開発したすごいツールキャストはもちろん、監督、カメラマン、大道具と大勢のスタッフが集結する撮影現場。これまで人力でのスケジューリングに頼ってきた業界に風穴を開けるべく、ネットフリックスが独自にツールを開発した。「Prodicle(プロディクル)」は何がすごいのか。実はあらゆる業界で働く人へのヒントも隠されている。
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第57回2020.06.12シニアの方が出社率高い? 「人流」からオフィス不要論を考える緊急事態宣言の49日間、人の流れはどのように変化していったのか。世代別の傾向はあったのか。ドコモ・インサイトマーケティングが提供するモバイル空間統計を用いて、人流がどのくらい減ったのかを観測した。リモートワークの発達で「オフィス不要論」も叫ばれるが、人との雑談・相談を代替することはできるのだろうか。
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第56回2020.06.05子豚の色は変えられないがパーツの色は変えられる AI導入の勘所養豚業界では子豚と他の物を見分けるAI(人工知能)が開発されている。ITを取り入れることでの経済的効用は大きいという。逆にアナログ的な発想で、AIを導入するよりも低コストで問題解決できる例もある。「変えられないもの」と「変えられるもの」を的確に区別することは、デジタル変革においてはとても重要だ。
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第55回2020.05.29画像や動画にまつわる困り事を一挙に解決してくれる便利ツール画像や動画の加工や配信は、今のマーケティングには欠かせない作業だが、これを一手に引き受けてくれるツールがある。エンジニアにはよく知られた「クラウディナリー」は、大手メディアやECサイトなど御用達のサービス。人工知能(AI)を使った画像処理サービスなども提供していてとても便利だ。
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第54回2020.05.22初「オンライン診療」体験記 東京に居ながら北陸の病院にワープ新型コロナウイルスの影響で、注目が高まっているのが「オンライン診療」だ。だが実際に利用したことがある人は少ないだろう。初診となるとさらにハードルが高い。使い勝手を知るべく、筆者は謎の発疹を診てもらうため、都内から北陸の医師に初診を依頼。身をもって体験した一部始終はいかに?
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第53回2020.05.15製薬業界に学べ! すべてのメーカーに役立つ「アドヒアランス」患者に薬を正しく服用してもらうための概念「アドヒアランス」。病気を治すという本来の目的はもちろんのこと、製薬会社や調剤薬局にとって、その薬の治療成績を上げるためにも重要なキーワードだ。自動車や食品などあらゆるメーカーで応用できる概念のため、知っておくべきだろう。
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第52回2020.05.01ファンの応援を金に変える 社会貢献もできるTシャツ店応援したい人に思いを伝える方法はさまざまある。ただSNSで「いいね!」するだけでは物足りないし、かといっていきなり現金を送り付けるわけにもいかない。そんなニーズに応えた、「応援する気持ちを金に変換する仕組みの提供」を目指しているサービスがある。
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第51回2020.04.24マーケティングとIRとを結びつける「ファン株主」「我が社の製品・サービスを愛好するばかりではなく、会社自体にまで愛着を持ち、応援してくれる」。こんなファンを増やしたいのはマーケティング部門だけではない。IR部門は同じ観点で個人投資家を増やしたいと考えている。マーケティングとIRの接点となる「ファン株主」の重要性は今後高まっていくはずだ。
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第50回2020.04.17ホンダもヤマハも参戦する「ちょうどいいサブスク」クルマやバイク、ハイアマ向けのカメラといった高額な商品は、手軽に試したいというニーズに応えるサブスクと相性が良い。ホンダやヤマハ発動機など大手の参戦も相次ぐ。ただ耐久消費財のサブスクには、敷居を下げる効果と引き換えに、事業者にとってネガティブな一面もある。
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第49回2020.04.03「束ねる」か「ばらす」か サブスクが変える消費者心理定額制で、ものやサービスを消費者に届ける「サブスクリプション」ビジネスは、大きく分けて2つのタイプがある。「束ねるサブスク」と「ばらすサブスク」だ。これは、顧客が意思決定をする頻度がどう変わるのか、といった観点で整理できる。
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第48回2020.03.27人気の米ペットフードサブスクに学ぶ「最初に顧客にすべき質問」「あいつの飼ってる犬の方が、俺よりいいもの食ってる。こんちくしょう」――。こんなセリフを昭和に刊行されたマンガ雑誌ではよく見かけたものだ。お金持ちの友人に飼われている犬がステーキ肉を食べているのを見た貧乏な主人公が、奮起して活躍していくといったストーリーだ。
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第47回2020.02.28電柱広告の価値は“地味技術”でアップデートできる商売の基本は、「安く買って高く売る」ことに尽きる。売り手と買い手の間にある価値のギャップが、大きければ大きいほどもうかるからだ。みんな目を皿のようにして、このギャップを探しているが、そう簡単には見つからない。ただ最近は、新しいテクノロジーの登場によって新たなギャップを作り出しやすくなっている。
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第46回2020.02.21「オペレーションの透明性」に基づく顧客対応 箱根老舗旅館の作戦前回は、あるホテルがチャットボットを活用し、顧客からの問い合わせに真摯に対応しようとする試みを紹介した。長期・継続的に関係を持つようになった事業者に対して今、顧客は「正直さ」を求めている。こうした要請にテクノロジーでどう応えればよいのか、今回も考察してみたい。
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第45回2020.02.14チャットボットで「自社サイト回帰」 ホテル業界の賢いアイデア顧客と事業者の関係が長期・継続的になり、事業者が「正直」であることへの要請が高まっている。この傾向の背景にあるのは、テクノロジーの活用による新しい機能やビジネスモデルの登場だ。今回はAI(人工知能)が及ぼす影響を考えたい。