2022年8月のリリース以降、米国で爆発的にダウンロードされているアプリ「Gas(ガス)」。高校生向けのコミュニケーションアプリだ。Discord社による買収も発表されたが、一体どのような点が評価されているのか。
昨秋来、米国の若者に人気のアプリとして“Gas(ガス)”の名を聞く機会が増えた。Gasは高校生を対象としたiPhone用のコミュニケーションアプリだ。2022年10月の時点では、国内の十数の州のみで限定展開していたが、米国のApp Storeで1位を獲得(i)。8月末のリリース以来、2カ月弱で約50万回ダウンロードと推測されている。
利用者は、自分が通う学校を指定し、同級生を登録。Gasが定期的に投げかける「あなたが憧れている人は?」とか、「学校のイベントでの人気者といえば?」といった質問に回答する。選択肢には、同じ学校に通う同級生の名前が表示される。そして投票で選ばれると、選ばれた人に通知がいき「フレームズ」と呼ばれるアプリ内スコアが付与される。
要するに、さまざまな褒めどころが用意されており、それに見合う人は誰か、投票という形で示す、というサービスだ。このアプリの特徴は、投げかけられる質問がポジティブなものに限られること。一連の質問はアプリの運営者が設定し、ユーザーが勝手に設定することはできない。App Storeでの評価は極めて高く「シンプルだけど、クラス内での会話のきっかけになる」といったコメントが見られる(ii)。
開発元であるFind Your Crush社は「褒める」ことに特化した理由について、「自分自身をよりよく感じられる場所をつくり、あなたを愛し、称賛する人々がいるということをユーザーに示すため」としている(iii)。
筆者は米国の高校生ではないため、実際に使うことができない。そのため、このアプリがクラス内で広範なコミュニケーションを促しているのか、あるいは既存のリア充勢の人間関係をより強固にしているだけなのかは分からない。が、ポジティブな評価関係によってコミュニティーを強化したい、という開発者側の意図はよく分かる。
Find Your Crush社のNikita Bier(ニキータ・ビア)社長にとってGasの開発は、「褒める」アプリへの再挑戦となる。17年に開発した”tbh”("to be honest”「正直に言うと」の略)は、Gasとほぼ同様のポジティブ質問アプリだ。立ち上げから2カ月で500万超のダウンロードという急成長が報じられるとともに、17年10月にフェイスブック社(当時)によって買収された(iv)。フェイスブック傘下でサービスが継承されたものの、翌年にはサービスは停止されている。
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