LTV(顧客生涯価値)やNPS(顧客推奨度)、顧客ロイヤルティーは、マーケターが考慮すべき重要な指標だ。しかし社内で別業務に携わる人たちは、それらのワードを特段重要性を持たないものとして認識している可能性がある。そこで、企業の共通言語である「会計書類」に当てはめて、それら指標の事業への必要性を見直すのはどうだろう。

(写真/Shutterstock)
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 筆者が新卒で入社したのは、証券系の中堅システムインテグレーターであった。筆者は証券業以外を担当していたが、門前の小僧として証券業界用語を耳にする機会は多かった。例えば「顧客勘定元帳」がある。これは、一人ひとりの顧客の取引について記録したもので、入出金、取引の種類、売買時の価格、手数料などを記す書類だ。

 証券会社は、顧客から金や資産を預かってその取引を代行する。そのため、顧客から預かった金については、自社の金や、他の客の金とごっちゃにならないように管理する必要がある。顧客勘定元帳は、法により作成を義務付けられた書類であり(i)、顧客対応の高度化のためにつくるものではない。なお、「顧客勘定」の対義語は「自己勘定」。証券会社自身の財布による取引を意味する。

 顧客ごとの取引記録と考えれば、通信業界や電力・ガス業界にも同様の記録は存在する。従量課金のため、請求上必要だからだ。しかし、同じ「顧客ごとの取引記録」なのに、証券業のそれとは性質が異なる気がする。なぜだろう。

 顧客からすれば、通信・エネルギーのそれは「費用」の記録にすぎない。一方、証券業の顧客勘定元帳は自らが保有する資産も計算できる。通信・エネルギー業界の記録から顧客にとっての支出は計算できるが、来期に持ち越すべき資産に関する記録はない。

 ここまでの話をまとめると、証券業の顧客勘定元帳の面白みは次の2点となる。1つは、自社と取引がある数百万人について会計書類を作っていること。もう1つは、それが顧客の支出だけでなく、資産も取り扱っていることだ。いってみれば、それぞれの顧客の損益計算書と貸借対照表をつくろうと思えばつくれる状態にある。金融業ゆえに金銭価値で測れるものを対象としている。よって、会計書類と相性が良いという利点はあるものの、なかなかワイルドなしくみだ。

 この顧客勘定元帳の発想を、他のB2C領域に適用できないか。妄想したい。

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