箱をあけると、真っ白なまんじゅうの上に鮮やかな緑色をした松の葉がおいてある。何のために松の葉を入れているのか。まんじゅうが白いので彩りのためだろうか。確かにそのコントラストも美しいが、松の葉を入れた一番の目的は賞味期限を確認することにあった。

(写真/Shutterstock)
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 これは福岡県にある石村萬盛堂のお菓子「鶴乃子(つるのこ)」の話だ。鶴乃子の賞味期限は製造後2週間。賞味期限を明記するようになったのは昭和30年ごろで、それまでは松の葉を入れていた。松の葉が茶色に変色するのもおおむね2週間であるため、賞味期限の目安となる。創業者である石村善太郎氏の発案という(i)

 また、湿度が低いと鶴乃子は通常よりも固くなりやすいが、松の葉も湿度が低いと早く茶色くなるというから気が利いている(ii)。賞味期限表示が状況に応じてダイナミックに変わるようなものだ。なお、菓子名にある“鶴”と“松”で縁起もいい。一石三鳥のすごいアイデアだ。

 ここでの松の葉は、経過時間を計測し、可視化する。ちょっとした湿度計も兼ねるなど、一種のセンサーの役割を果たしている。それにより、まんじゅうの賞味期限が切れていることに気づかずに、口の中に放り込んでしまう事態を避ける。

 望ましくない事態の発生を記録するためのセンサーもある。名古屋市にある修理工房という企業は、時計の修理を希望する遠方の顧客にも対応する。最初に、時計を工房に送るための梱包キットを送付するのだが、その中にはビスケットが同梱(どうこん)されている。なぜか。もしもビスケットが割れていた場合には、配送経路に支障がある恐れがあるため、という(iii)

 なおその際のビスケットはベルギーのロータス社製のものだ。同社は次のように説明する。「ロータスの和名は蓮(はす)。輪廻(りんね)転生の象徴にございます。力尽きたお時計にふたたび命を吹き込むのが、私たち時計修理工房の、使命とお考えいただければ幸いです」。口笛を吹きたくなるほどかっこいい。