米軍から広まった「チャレンジコイン」など、ゆるやかなつながりをつくるさまざまな形がある。デジタル時代において、商品やサービス、コンテンツなどに“星”を付けて評価したり、「いいね!」ボタンを押したりする仕組みが当たり前になってきているが、それらはつながりをつくる仕組みとして機能しているだろうか。

(写真/Shutterstock)
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 伊丹十三監督の映画はかっこいい。1987年に公開された映画『マルサの女』は今でもよく見直す。この映画は「(税金を)取る側のプロと隠す側のプロの、知力の限りを尽くした死闘。それをリングサイドで眺めるような作り」を目指して撮られた。死闘をリングサイドで見るのは楽しい。『シン・ゴジラ』と通ずるものがある。

 最近、製作日誌を改めて読み直していたのだが、以前は気づかなかった一節に感銘を受けた(i)。撮影を開始する際に、すべてのスタッフが初めて勢ぞろいする打ち合わせの様子だ。伊丹監督から、本作にかける意気込みや、それぞれのスタッフに対する期待や注意がたくさんの項目にわたって示される。

 そのなかで監督は次のように言う。「家具のタイアップ先なども、映画界全体の財産であるから、『映画はこりた』と言われぬよう、家具の扱いなど、みんなでくれぐれも気をつけてもらいたい」。これは無料、あるいは格安で、映画の小道具を貸してくれる企業に対する気配りである。

 筆者は映画製作の現場は知らない。でも、キックオフの全体会議で、映画業界の長期的な繁栄のためにタイアップ先にまで気配りしていることにはしびれる。タイアップ先の企業はコアメンバーではない。映画でいえばエンドロールの最後に出てくる「協力」のグループだ。そのようなゆるやかな関係にある協力者との間で、伊丹監督は小さな信頼関係を重ねようとしている。

 業界は違うが米軍が由来とされる「チャレンジコイン」にも似たような工夫を感じる。チャレンジコインは共同部隊との絆の証しとして交換されたり、上官が部下の働きをたたえたり、また組織内外の人に対して感謝を表したりするときに送られる(ii)

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