米国のD2C眼鏡販売スタートアップの「ワービーパーカー」は、アクティブカスタマーの数をアニュアルリポート(年次報告書)で開示している。例えば、顧客獲得のために要した費用の詳細な内訳など、顧客基盤に関する生々しい情報は競争相手に知られたくない数値でもある。しかし、それらを社内だけの管理指標とするのではなく外部に情報開示すると、さまざまなメリットを生み出すきっかけになるかもしれない。

(写真/Shutterstock)
情報開示が大きなメリットにつながる可能性もある(写真/Shutterstock)

 米ワービーパーカーは2010年に創業した眼鏡販売のスタートアップだ。D2Cビジネスの先行的な事例としてよく知られている。現在では実店舗も160以上運営し、顧客接点を強化している。

 ワービーパーカーのアニュアルリポートを読んでいると「アクティブカスタマー」という指標がある(i)。同社ではアクティブカスタマーを「12カ月以内に、少なくとも一度の購買を行った顧客」と定義している。自分のために複数回購入した人も家族などのために購入した人も含まれる。

 眼鏡を1年に1本購入するというのは、なかなかの高頻度に思える。自分のための購入ならば、まるでTシャツのように気分に合わせて眼鏡の使い分けをする顧客を想定しているのだろう。家族やパートナー向けへの購入であれば、「買ってあげている」ということになるので、極めて強力な推奨行動となる。

 いずれにせよワービーパーカーでは、とてもロイヤルティーが高い顧客をアクティブカスタマーと定義していることが分かる。ちなみに同社のアクティブカスタマーは21年の時点で220万人。同社が販売する眼鏡の単価が1万5000円とすれば、アクティブカスタマー由来の売り上げは単純計算では330億円になる。これは全売上高540億円の6割を占める。

 本来は顧客基盤に関する情報を開示する義務はない。ところが、このような数値の開示について米国で注目すべき変化が起きている。ワービーパーカーのような開示をする事業者が増えているのだ。

 その傾向は特に新興企業において顕著だ。国際会計事務所のプライスウォーターハウスクーパースが、17年7月から20年6月までに主要取引所で行われた全ての米国新規上場(IPO)について調べた調査結果がある(ii)。この調査によれば、IPOに伴い米国証券取引委員会(SEC)に提出された書類のうち30%に「顧客に関する非財務的な情報」の記述があるという。SaaS型事業が増え、成長の根拠として継続収益を説明する事業者が増えていることにも一因があるのだろう。

 では、国内の大手事業者はどうだろうか。上場企業のうち、B2Cビジネスを行う事業者の統合報告書の中から、顧客基盤に関して情報を開示している特徴的な事例を見てみよう。

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