同意なきパーソナルデータの収集と活用を禁じている欧州連合(EU)で注目されているのが、公益心に基づく自発的なデータ開示である「データ利他主義(Data Altruism)」という考え方だ。パーソナルデータをどのように集め、社会で活用していくか。献血の歴史をひもとくと、データを収集・活用しようとする企業・自治体が学ぶべきことが見えてくる。

献血の歴史から「データ利他主義」を理解する(写真/Shutterstock)
献血の歴史から「データ利他主義」を理解する(写真/Shutterstock)
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 「データ利他主義(Data Altruism)」というちょっと気になる言葉がある。公益に資する目的のために、個人や組織がデータを提供する、という考え方だ。

 データ利他主義は、欧州連合(EU)が制定を進める「データガバナンス法案(DGA:Digital Governance Act)」の中で示されている。データガバナンス法案は、組織をまたいだデータ共有の促進を目的としたものだ。目下、採択プロセスが進行中であり、2021年11月にはEUの立法府である欧州理事会と欧州議会において暫定合意に達している(i)

 法案の中では、データ利他主義を進める主体となる「データ利他主義組織」に関する規定が示されている。非営利であることや、組織運用上の透明性を確保するために開示すべき情報などが定められている。

 データ利他主義を持ち出したEU当局の気持ちは分かる気がする。EUでは、同意なきパーソナルデータの収集と活用を禁じている。しかし、社会全体におけるデータ活用は進めたい。中国型の監視社会はもってのほかだが、データ活用による社会全体の最適化がパワフルに進んでいることが全くうらやましくないのかといえば、そんなことはない。だとすると、公益心に基づく自発的なデータ開示しかない。そんな議論があったのではないだろうか。

 これに対する反応はさまざまだ。歓迎するコメントも見られる一方で、否定的な意見もある。ベルギーに本拠地を置く欧州消費者機構は「公益の範囲が不明瞭」であるという懸念を示している(ii)。また、アルゴリズムに基づく意思決定を監視するドイツのNPOアルゴリズムウォッチは、理念には賛同しつつも「公益のためであったとしてもデータ保護にかかる規制が全く緩められるものではない。(中略)このような官僚主義的な施策は、あらゆる利他主義を抑圧することになるだろう」と懸念する(iii)

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