「脱炭素」が叫ばれる今の時代、車や飛行機での移動や豪華で広い家などは、環境負荷の観点から“ぜいたく品”にもなりかねない。だが、バズワードとして注目される「メタバース」は、そうしたプレッシャーと無縁になれる場所でもある。バーチャル空間に作った広大な庭でキリンを飼い、膨大な電子書籍コレクションで漫画を読みふける。環境負荷が低いメタバースが、人々にとって娯楽の場となる可能性もありそうだ。

環境負荷が低いメタバースは人々の娯楽になるか(写真/Shutterstock)
環境負荷が低いメタバースは人々の娯楽になるか(写真/Shutterstock)

 キリンを飼うならメタバースがいい。広大な庭でキリンを飼う。高い樹木の葉を器用に食べるキリンを見ながら酒を飲む。キリンの体重は1トン近くある。危ないので人は庭に出てはいけない。室内には大きな水槽もある。優雅に泳ぐ熱帯魚を見ながら、もう一杯飲む。

 夜も更けてきたら、メタバースの自室に戻る。1万冊の蔵書と自分専用シアターがある夢の巨大視聴覚室だ。現実では6畳間に、「人をダメにするソファ」が置かれているだけの部屋だが、メタバース上では100畳間。物理的制約から泣く泣く電子書籍化した漫画のコレクションが整然と本棚に並んでいる様子は心地よい。どういう仕組みかは分からないが、メタバースには老眼がなくて助かる。漫画『沈黙の艦隊』を全巻読む。酒が進む。

 ちょっと飲みすぎたので風呂に入って寝ることにする。風呂は普通の風呂だ。狭い。風呂から出るときに排水口にたまったゴミの掃除をする。トイレも普通。この家にはもう20年くらい住んでいるので、あちこちガタが来ている。排水管から若干水漏れもしている。明日こそ工事業者に依頼しなくてはならない。寝る前に床の上の物を片付ける。ルンバに食べられたら大変だ。

 心なしか目が疲れたので早く寝よう。明日は朝からつらい会議だ。打ち合わせ相手のおじさんは悪い人ではないが、口調がきついので気が重い。メタバース内の会議ツールでは自分の背景どころか、相手の外観やしゃべり方を変えることができる。明日も彼の外観と声をハリウッド俳優のジェニファー・ローレンスにしよう。ジェニファーに言われるならば、どんな厳しい言い方でも耐えられる……。

 以上は、「メタバース」と聞いたときに筆者が想像する様子である。

 筆者はメタバースがよく分からない。サービス提供者側の「稼ぎたい!」という強い気持ちは理解できるが利用者はうれしいのだろうか。よく分からないので、できるだけ前向きに考えてみたのが先の小話だ。こうして見るとそんなに悪くない。

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