データを活用した、よりよい体験とは何か。「ビッグデータ」という言葉が生まれた十数年前の当時にそうした課題に果敢に取り組んだ人たちの中には、そろそろ企業の経営の中枢に携わるような人もいるだろう。そんな今こそ、ビッグデータを活用した「製品の利用体験が豊かになる」という“果実”が実る時期なのかもしれない。

(写真/Shutterstock)
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  「鈴木くん、テレビのリモコンって失礼だと思わない?」と言った人がいた。もう十数年前の話だ。その人は、ソニーの松本義典さん。当時、ホームオーディオ・ビデオの事業部の部長として、新規事業を担当されていた方だ。

 リモコンが失礼とはどういうことか? 松本さんによれば、「音量の調整なんて勝手にやってほしいよね。真剣に見ているニュース番組のときには音量を上げてほしいし、バラエティー番組を聞き流しているときには控えめな音量にしてほしい。こっちはいつもそういうふうに音量調整をしているんだから、学んでほしいと思わない?」ということだった。

 なるほど、確かに!と膝を打ったことを覚えている。まだビッグデータという言葉が出始めたばかりで、「データを使って何やるの?」と悩んでいる人が多かった頃だ。製品の利用に関するデータを取れるようになったら、どんな世界が実現可能になるのか。そうしたことを考える上で、松本さんの話からは大きな影響を受けた。

 もう一つ印象深かったことがある。「データを活用して、よりよい体験を提供する」という考え方が社内で定着するには時間がかかるだろうという話だ。松本さんは「そうした考え方を受け入れやすい世代と、そうではない世代がある。自分だってギリギリ分かるかどうかの世代だ。真正面からそういう話をしても理解されないだろう」と言った。

 しかし、そうかといって諦めるのではなく、松本さんはまず経済的な効果が明確なところから地ならしを始めた。例えば、機器の利用状況が分かればサポートコストが下がるといった施策だ。経済合理性が明確なテーマを前面に出して、製品にデータ収集のための接続機能を付ける。そうやって「よりよい体験」に向けた地ならしを進めていた。

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