知識は拡張現実、すなわちARだ。例えば、地理や地学の知識がほんの少しあるだけで、いつもの風景ががらりと違って見えてくる。世界の“解像度”を上げる知識やきっかけは、埋もれてしまっている自社の製品やサービスを生活者に発見してもらうヒントになるかもしれない。

ちょっとした知識やきっかけで、世界の“解像度”が上がることがある(写真/Shutterstock)
ちょっとした知識やきっかけで、世界の“解像度”が上がることがある(写真/Shutterstock)

 NHK総合テレビで放送されているテレビ番組「ブラタモリ」が面白い。これまでの人生で地理や地学には全く興味がなかったが、ブラタモリを通してずいぶんと関心を持つようになった。

 番組では、ぶらぶら歩いているタモリさんが「この道、途中で変な曲がり方をしてますよね?」と気づき、地理の専門家が「お! 分かりましたか。なぜだと思いますか?」と尋ねる。しばし無言で考えたタモリさんが「もしかして、○○ですか?」と答え、「大正解です!」と専門家が喜び、その脇で一人で話題に取り残されるアナウンサー……。

 地理の知識があればちょっとした道の勾配も楽しめるし、地学の知識があれば転がっている石を見るだけでいくらでも想像できることをタモリさんは教えてくれる。つまり、知識を一つ得ると、世界を認識するレイヤーが一つ増えるのだ。様々な知識を持つことができれば、世界を多面的に見られるようになる。ブラタモリから一転、「タモリ倶楽部」(テレビ朝日)にチャンネルを切り替えると鉄道や鋳造などこれまた違う世界を扱っており、タモリさんが持つレイヤーの多さにあこがれる。

 タモリさんには遠く及ばないけれど、日常生活の中で「レイヤーが増える喜び」を感じることはある。筆者はコンサルティング業のため、様々な業種のお客さんが私のレイヤーを増やしてくれる。例えばガラスメーカーの人と仕事をしているときには、ガラスに関する知識が増えて興味が湧くようになる。これまで気にも留めていなかったガラスだが、今ではその四隅に薄く印字された商品名をつい見てしまうようになり、「これはペアマルチ……、日本板硝子さんの仕事か」などと一人でほくそ笑むようになった。これもレイヤーが増えた一つの例だ。

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