自分のチームが公式戦で得点したシーンや、頑張って練習をしてきた様子、準決勝で負けて悔しがっている様子などをつなぎ合わせて編集した「モチベーションビデオ」が面白い。無邪気に「頑張れ」と言っている企業CMなどは反感を買いやすいが、「頑張っていた自分が自身を励ます」のならば受け入れられる。新たな企業メッセージとしての可能性がここにありそうだ。

自分が頑張った様子を素材にした「モチベーションビデオ」に企業メッセージの成功のカギが潜んでいそうだ(写真/Shutterstock)
自分が頑張った様子を素材にした「モチベーションビデオ」に企業メッセージの成功のカギが潜んでいそうだ(写真/Shutterstock)
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 特定の領域で進化した手法が、その他の領域にも転用されていくことはよくある。まだ実現していないものや転用の可能性を感じる手法もある。例えば、私が関心を持っているのは「モチベーションビデオ」だ。競技スポーツの世界では高校生の部活から日本代表までよく用いられている手法だ。

 モチベーションビデオとは、読んで字のごとく「モチベーションを高めることを目的としたビデオ」だ。具体的には、自分たちのチームが今季の公式戦で得点したシーンや、頑張って練習をしてきた様子、前年の準決勝で負けてしまったときに悔しがっている様子などをつなぎ合わせて編集。テンションが上がる音楽とともに、おおむね10分くらいの動画に仕立てることが多い。これを大切な試合の前にメンバー全員で見て士気を高め、試合に臨む。

 要するに「我々は、あんなに頑張ったじゃないか!」「あのときにこんなにうまくいったじゃないか!」「今日もうまくいくよ!」というメッセージを、他の誰でもなく自分の頑張りを素材として自分自身に伝えるものだ。

 このような取り組みはいつからあるのか調べてみたところ、一般紙では2003年の読売新聞に掲載されていた。記事の中では、「闘志を高めるため、試合直前に得点シーンを見るのは育成年代の日本代表などでも取り入れられている手法」として、前橋育英高校のサッカー部が活用していると紹介されている(i)

 その後、デジカメの低廉化やスマホの低年齢層への普及、スマホカメラの高機能化、高度な映像編集ツールを簡易に使えるようになったことなども後押しとなり、プロスポーツ選手以外も活用しやすくなったと推察される。同種のビデオはYouTubeで検索すると山ほど出てくる。

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