売り上げや利益といった財務指標の上がった下がったは誰でも分かることだが、非財務指標を設定し、それを業務遂行の寄る辺(よるべ)とすることは一筋縄ではいかない。例えば、ナイキは顧客ロイヤルティーに関する指標として、アプリを介して収集した走行距離やトレーニングした量を採用。「スポーツに汗を流す人は、我が社と価値観を同じくするお客様ないし、お客様候補である」という姿勢が透けて見える。

ナイキは走った距離やトレーニングした量を顧客ロイヤルティーに関する指標の1つとしている(写真/Shutterstock)
ナイキは走った距離やトレーニングした量を顧客ロイヤルティーに関する指標の1つとしている(写真/Shutterstock)

 コネクテッドデバイスか、スマホのアプリかを問わず、事業者は顧客との接点を増やしている。接点が増え、顧客の様子を測れるようになってしまうと、もう測らないわけにはいかなくなる。また、測れる数値は、改善すべき数値にもなる。

 売り上げや利益といった財務指標の上がった下がったは誰でも分かることだけれども、非財務指標を設定し、それを業務遂行の寄る辺とすることは一筋縄ではいかない。今、多くの経営者はそのような「財務指標につながると期待されるが、直結しているわけではない非財務指標」を設定・運用する、という胆力を問われているだろう。

 「何をもって顧客を測るのか」ということは、企業が顧客をどう捉えているのか、ということでもある。例えば、ナイキの非財務指標は面白い。日経クロストレンドの記事「ナイキ流CRM戦略 買ってから進化し続けるシューズ」によれば、ナイキは顧客ロイヤルティーに関する指標として、アプリを介して収集された走った距離やトレーニングした量を用いている。機械的に収集されるデータもあれば、顧客が自ら入力するデータもあるだろう。この指標は同社では「汗の資産」と呼ばれている。

 ナイキ店舗での購買金額ならばいざ知らず、「汗の資産」をロイヤルティー判定のための指標とするのは胆力が求められることだろう。以下は、完全に筆者の邪推であるが、このような指標を社内会議に諮ったら、年功だけを重ね、今は何の仕事をしているのかよく分からない部長補佐代理のような人から「それは本当に収益につながるのか」とか「アディダスのウエアを着てトレーニングした時間まで含まれてしまうではないか」といったケチがついてしまう、という企業は多いのではないだろうか。

 ナイキの中でどのような議論があったのかは分からないが、「汗の資産」という指標からは「スポーツに汗を流す人は、我が社と価値観を同じくするお客様ないし、お客様候補である」という姿勢が透けて見える。

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