世界を代表する観光地の水質が劇的に改善している。コロナ禍で観光客が激減したためだ。人流と下水への負荷は関係するため、適切な下水道施設運営のためには人口動態データも重要になってくる。将来実現するスマートシティーでは、さまざまなデータを連係し、今までとは次元の違う“効率的な運用”が必須になるはずだ。

(写真/Shutterstock)
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 ハワイやベネチアなど、世界を代表する観光地の水質が劇的に改善している。新型コロナウイルス感染症の影響により、観光客が激減したためだ。ハワイでは2020年4月の失業率が23.8%に達する一方で、ホノルル中心部から車で30分のハナウマ湾の海水の透明度は60%以上も改善している(i)。ベネチアの運河からも異臭はなくなり、水は澄み、魚が泳いでいる様子が見えるという(ii)

 言われてみれば当たり前の話だが、観光客は金も使えばトイレも使う。結果として、そこに住んでいる人よりも多くの負荷を下水処理施設に与えることになる。場合によってはその処理容量を超えるような負荷になることもあるだろう。

 そのような状況を分析した研究があった。「礼文島への観光客が下水処理場の汚濁負荷に与える影響と放流先河川の水質」だ(iii)。本研究が行われた11年の礼文島の人口は約3000人。それに対して春から夏にかけての観光シーズンには、月に数万人の観光客がやって来る。研究では、処理施設における下水の流入状況や処理の放流水の水質について分析をしている。

 この分析により何が分かったのか。観光シーズンにおいては、下水処理場への流入量が2倍以上になっている。それに加えて、流入する下水の性質も平時と大きく異なることが分かった。生活排水とし尿は、成分が異なる。し尿による下水は、窒素の量が多い。通常ならば下水処理施設で十分な窒素除去(脱窒)が行われてから河川などに放流されるのだが、春先から夏にかけては十分な処理が行われず窒素の濃度が比較的高いまま放流されていることが分かったという。

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