気象予測のためには膨大な計算が必要だ。観測データと予測データを同化させることでより精度の高い予測を行おう、という取り組みが「データ同化」。最近よく聞く「デジタルツイン」を実現する手法の一つもデータ同化だ。

(写真/Shutterstock)
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 「雨粒が地上に落ちてくるまでには2分かかる。しかし、その雨粒が風で吹き上げられれば、落ちてくるまでの時間は変わります。“風で巻き上げられたかどうか”を知らないままに予測をしたら精度が下がってしまう。だから、気象予測をする際には観測データの鮮度がとても大切です。鮮度の高いデータを用いて高頻度で観測をし直すことが予測精度の向上につながります」

 これは、以前話を伺った気象学者の方のコメントだ(i)。言われてみればその通りなのだが、とても新鮮な驚きがあったことを覚えている。

 この話をもう少し具体的な事象と関連付けるとどうなるか。例えばゲリラ豪雨。この予測が難しいのは、その兆候となる雲が発生してから雨が降るまでの時間がとても短く、5分もたてば状況が大きく変わってしまうためだ。

 これまで一般的に使われてきた気象レーダーは、空全体の状況を把握するのに5~10分は必要であった。通常の気象観測に使われているパラボラアンテナ型のレーダーは、観測のための細いビームを1本照射する。レーダーを回転させながら徐々に仰角を上げ、空全体のどこに雨粒があるのかを測定するためだ。ゲリラ豪雨の“卵”を捕捉するには、データの鮮度が不十分だ。

 一方で最新型の気象レーダーは「フェーズドアレイ型」のレーダーとなっている。これはビームを“面”で照射するため、パラボラ型のように仰角を上げながら測定する必要がない。30秒でレーダーを一回転させれば、60キロメートル先までの空全体の様子を隙間なく測定することができる。測定距離を30キロメートルに限定すれば10秒で全天の状況を捉えられるという。

 空の現状を把握した上で、予測もしなければならない。雲の成長を精度高く予測するためには、さまざまな要素を踏まえたシミュレーションが必要だ。例えば、雲の生成には上昇気流が大きな役割を果たす。上昇気流のできやすさは、温度や湿度、風向、風速などが影響する。そうした要素を踏まえて30分後にはどういう状態になっているかを予測する必要がある。

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