社会全体が成熟し、新たな設備投資が難しくなっている今、既存の膨大な設備をいかに効率よく運用・管理していくか。電力業界、石油化学業界といった重厚長大産業の奮闘を紹介する。

(写真/Shutterstock)
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 電力業界の本を読んでいると「ノンファーム型接続」という言葉が「既存系統の空き容量を活用」という説明とともに出てくる(i)。最初は何を言っているのか分からなかったのだが、解説を読むとなかなか趣のある面白い話であった。

 発電された電気は送配電網を介して、発電地から需要地へと届けられる。この送配電網が「系統」と呼ばれるが、系統は大掛かりな設備なので簡単には増強できない。また、系統の容量を超えた電気を流そうとすると、システム全体が止まってしまう。なので、系統に対して新規電源の接続を、予防的にお断りすることがある。実際、千葉房総方面の基幹となる送電ルートはそのような状態にある。再エネ事業者の新規参入が進む中で、これは大きな問題であった。

 ところが、送配電事業を行う東京電力パワーグリッド(東京・千代田)が、年間の電気の流れを1時間単位でシミュレーションしてみると、年間8760時間のうち容量オーバーとなる時間帯はごくわずか。仮に再エネ電源を500万キロワット分追加したとしても、容量オーバーとなるのは年間の1%の時間にも満たないということが分かった(ii)。それならば、容量オーバーになりそうなときだけ発電を一時的に止めてもらえば、より多くの再エネ電源を系統につなげることができる。これが「ノンファーム型接続」の意味するところだ。このような取り組みが業界内で進んでいるという。

 重要な社会インフラである電力、特に送配電システムは、これまでは設備を計画的に増強することで、システム全体の安定を図っていた。ノンファーム型接続の話を聞くと、既存設備の運用を高度化することによってさらなる効率化を図ろうとしていることが分かる。

 このような事情と工夫は電力業界に限らない。社会全体において、明治維新以降、山のような設備投資が行われてきた。ピークは1980年代だ。いまや社会全体は成熟し、無邪気に新規投資ができなくなっている。そのような中、既存の膨大な設備をいかに効率よく運用・管理していくのかを検討している取り組みが各所で進んでいる。

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