消費者金融の原型をたどると、個人間の濃密な人間関係や信頼関係から生まれたことが分かる。デジタルデータ活用全盛の時代に、どのように相手の信用を評価するか。様々なサービスで信用審査のコストを下げるために行われている施策を探ってみた。

 『サラ金の歴史』(中央公論新社)が面白い(i)。東京大学准教授の小島庸平氏が膨大な史料から「サラ金」の成長と衰退をまとめ上げた力作だ。本書の冒頭では、消費者金融につきまとうイメージと、その成立には大きなギャップがあることが、次のように示されている。

 確かに、人間関係の希薄化と、ドライに金を貸し付ける消費者金融のイメージは容易に結びつく。だが、よくよく調べてみると、消費者金融の創業者たちは、知人や友人に金を貸し付ける中で自らの金融技術を鍛え上げており、個人間金融こそが現在の消費者金融のゆりかごだった。逆説的ではあるが、消費者金融は人と人との濃密な関係性の真っただ中から生まれたのである。

 例えば消費者金融の原型には、職場の同僚に有利子で金を貸すというようなことがある。そのような「サラリーマン素人高利貸」は濃密な人間関係に依拠した事例だ。なぜこれが原型として成立していたのか。それは、同僚には高利貸し業務とは関係なく毎日会うし、給料日も分かる。もちろん懐具合もだいたい分かる。つまり信用評価のための情報が労せずに得られるし、取り立てコストも低いことが理由だ。

 やがて、より高度な事業として「団地金融」や「勤め人信用貸し」が始まる。

 団地金融とは、当時の先端的な住宅である団地に住む人を対象とした高利貸しだ。団地への入居には厳しい審査があり、それを突破した住人は支払い能力があり、貸し倒れリスクが低いと判断された。

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