自社商品やサービスを購入してもらった客に「いい買い物したなあ」と思わせることが、カスタマーサクセスの要諦だ。だが、この「いい買い物」の定義をしっかり説明できる企業はどのぐらいあるだろうか。重要なのは自社の社会的役割、つまり「パーパス」だ。
本連載の第86回で、カスタマーサクセスとは「いい買い物したなあ」とお客さんに言ってもらうことだ、という話をした。ところが、自社のお客さんにとってどのような状態が「いい買い物」であるのかと問われると、口をつぐんでしまう人は多い。とうとうと説明が始まった場合も、結局「いいもの(いい自社商品)」の話をしていることも多い。
以前本連載で紹介したフィリップスの取り組みは、「いいもの」と「いい買い物」の違いを明確に示す(i)。フィリップスはCTスキャンなどの医療機器を提供している。彼らが長年注力してきた「いいもの」は「短い時間で、たくさんの放射線画像を撮影できるCTスキャン」であった。
しかし、そこでの競争が頭打ちになる中で、フィリップスは「いい買い物」を目指すようになる。医療機器そのものに限らず、医療全体を効率化する取り組みを進めたのだ。具体的には、CTスキャンでの検査を怖がる子供のため、小児用検査室を海の底のような様子にしつらえ、スタッフが海中冒険にいざなうように検査室に誘導。「さあ海底の洞窟に潜るよ。息を止めて!」と呼びかけ、撮像中は息を止めてじっとするよう促す。このように短時間での検査を成功させる仕掛けを用意した。
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