クーポンやポイント還元は、昔から集客のための常とう手段だ。だが、この集客という目的を少しずらすと、顧客の行動変容を自然に促すことができる。例えば米国のドラッグストアや通信事業者などでは、「ほめどころ」「ごほうび」を工夫している。まずは、広島出張で偶然入った喫茶店で出合った、一風変わった100円引きクーポンのゲット方法から紹介しよう。

 私が広島に出張した際にたまたま入った喫茶店で、顧客がある条件を満たすと、100円引きのクーポンを渡していた(i)。条件とは「店を飾るための花を持ってくること」だ。その案内を見たとき、最初は「変わった店だな」と受け流したが、よくよく考えるとこの裏には店長の深謀遠慮があるのではないかと感じるに至った。

 この取り組みを通じて喫茶店が顧客に提供しているのは「100円の割引」ではなく、「花を堂々と自慢する場」であると考えられないだろうか。庭できれいに咲かせた花を自慢したい広島の有閑マダムも、これ見よがしにそれを自慢することは、はばかられる。出たがりだとは思われたくないからだ。

 そこに、「100円引きしますから、店のためにお花をお持ちいただけませんか?」という大義名分を与えたことによって、気持ちよく自己顕示ができる。恐らく花を持参するや否や撮影されたのだろう。レジの横には、「田中様の奥様が今日もこんなにすてきなお花をお持ちくださいました!」といった手書きのメッセージ入りのインスタント写真が大量に貼られていた。

 これが心地良い人にとっては、100円引きのクーポンは「100円引きとおっしゃるから、お持ちしたのよ」と言わしめるための大義名分にすぎず、割り引かれるコーヒーの元の値段が300円でも600円でも関係ないはずだ。