顧客に企業やブランドに対する信頼を持ってもらいたいとき、役に立つのが今から23年前に出版された『信頼の構造』という本だ。著者は「信頼」という言葉を幾重にも分類分けし、その重要性を説く。顧客が望むのはどの「信頼」なのか。改めて確認しておくと進むべき道への迷いがなくなるはずだ。

 「信頼」という言葉は一般的なものだけれども、日常会話の中では、その言葉の下でさまざまな人間関係が混同して表されている。では、「信頼」という言葉には、具体的にはどのような人間関係が含まれているのか。このような整理をしているのが、社会心理学者の山岸俊男氏による『信頼の構造』だ(i)。出版されたのは1998年であるが、今読み返しても面白い。

 では、山岸氏は信頼という概念をどのように整理しているのだろうか。

 まず、「能力に対する期待」と「意図に対する期待」を区別している。能力に対する期待は「実行する能力を持っているのか(できるのか)」ということであり、意図に対する期待は「やる気があるのか(やるのか)」ということだ。かかりつけの病院に行ったときいつもの老先生が休診で、すごく若いお医者さんが出てきたときには「能力に対する期待」への疑義が発生する。一方、夫の浮気に関する疑義は能力ではなく、意図に対する疑義であることが一般的だ。

「信頼」という言葉の中には、さまざまな人間関係が含まれている(画像/Shutterstock)
「信頼」という言葉の中には、さまざまな人間関係が含まれている(画像/Shutterstock)

 この「意図に対する期待」は、さらに「安心」と「信頼」に分類される。「安心」は、やらなかった場合に相手が損をする、という先方の損得に根差した評価と整理されている。双方の利害が一致していたり、相手が嘘をついたりした場合には青天井の損害賠償の責任を負うようなケースは「安心」できる状況としている。そして「信頼」は相手の人格や、自分に対して持つ感情についての評価に根差したものである。信頼概念の整理の中に「信頼」が出てくるのは据わりが悪いが、こちらは「狭義の信頼」と位置づけられる。

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