例えば、「アドテク」と「水道」、「洪水対策」と「アパレル」といった、全く関係のなさそうな業種をつなぐことができるのが「数学」だ。イスラエルや日本で、数学を駆使したスタートアップが勃興している。数学を「科学の女王」たらしめるもの、それは社会問題の解決をパワフルに進められる馬力を持った学問だから、といえるだろう。
「アドテク」と「水道」は全く関係がなさそうだけれども、その双方で事業を起こし、大きな成果を出している経営者がいる。シリアルアントレプレナーのアミール・ペレグ氏だ。ペレグ氏はインターネット広告向けの行動ターゲティング技術を提供する「YaData」を2005年に立ち上げ、08年に同社をマイクロソフトに事業譲渡。同年、水道設備の管理最適化を行う「TaKaDu」を立ち上げている(i)。
TaKaDuでは、水道インフラにまつわる課題の解決を行っている。水道事業者が収集・蓄積するデータを分析し、異常のリアルタイム検知や、故障箇所の迅速な特定を実現。新規でのセンサー敷設などは行わない。すべてクラウドベースで提供されるため、約1カ月で利用可能になる。例えば、水道管は埋まっているため、漏水していることは分かっても、その該当箇所の特定にひどく時間がかかるものだったのだが、同社の仕組みを用いることで、探索範囲が3分の1に縮小・効率化する、といった成果が得られているという。
立ち上げた理由について、14年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)にて、「水資源の節約のために、どのようにしてデータを活用することができるか?」という問題意識の下、「そのスキルを、新しいもの好きのIT業界ではなく、保守的な水関連業界に適用したい」と応じている(ii)。
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