米国民に「失業したら自動車を返品できる」というサービスを実施し、名を上げた韓国の現代自動車(ヒュンダイ)。だがこのさじ加減は非常に難しく、よかれと思ったサービスが、ユーザーに不快な思いを抱かせてしまうこともよくある。大事なのは「心情」と「都合」と「状況」のバランスだ。
ヒュンダイ・アシュアランスプログラムは、ヒュンダイの自動車を購入した顧客が失業した場合、自分の信用に影響を与えることなく自動車を返品できるというものだ。リーマン・ショック後の金融危機の中、2009年1月に実施された。明日にも職を失うかもしれないと不安に思いながらも、生活のためには自動車が必要という米国民に向けて、プロモーションが展開された(i)。
プロモーションの開始から半年後に行われた調査では「09年7月までに、10人中7人がヒュンダイに良いイメージまたは中立的なイメージを持っていること、将来自動車を購入する際、ヒュンダイを検討したいと考える米国人が増えていることが分かった」という。また、09年半ばには、米国で過去最高の市場シェア4.2%を達成したと報じている。
本プログラムだけが理由ではないだろうが、ヒュンダイの米国におけるシェアはその後、19年には8%にまで高まっている。金融危機の発生という状況と、顧客の不安という心情を適切に捉えた施策になった。なお、20年3月には新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、このプログラムを復活させている。
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